第161話:突き動かすものは一体…
雨梨目線___
外が騒がしくなってしばらくして館内放送で侵入者が暴れていると聞いた。蒼桜先輩は脅威の回復力で自力で歩けるようになっていたが戦闘は無理だろう。
護身用に持っていた拳銃と弾を用意し、制服に着替えた。
「雨梨、1人でどこに行くの?」
カーテン越しに低い蒼桜先輩の声が聞こえる。
「いえ、別に…。」
「俺も行くよ。」
カーテンが高い音を立てて開かれた。蒼桜先輩は制服を着、帯刀をしていた。
「先輩、先輩の体じゃ無理です。」
「民間人の犠牲を出すわけにいかないし、運良く痛み止めが効いている。足止めくらいは出来るよ。」
「先輩…。」
「雨梨…ごめんね。でも分かるよね?」
僕らは高校生とはいえ軍人だ。民間人を犠牲にしてはならないという教えを受けてきた。軍の応援が来るまでには時間がかかる。きっと病院にいる兵士が時間を稼ぐしかない。相手のお目当ても僕ら入院中の黒軍だから。
「分かりました。」
「本当にごめんね。」
先輩は怪我をしていないかのように歩いていた。痛み止めが効いているとはいっても、寝れないほどの痛みを和らげるために処方されていたはずだ。歩くだけで激痛が走るはずなのに、目の前のこの人はそれを感じさせない。
「いたぞ!!楽に死なせてやる!」
「怪我人相手にいきがるなんて、みっともないな。」蒼桜先輩はいつも通り綺麗な剣さばきで相手を斬っていく。蒼桜先輩の剣さばきはまるで舞っているようだ。綺麗な形と適切なタイミングで無駄のない動きをする。相手は簡単な動きであるはずの動きに何故か対応出来ず斬られていく。ここまで基礎を極めた人は他にいない。
「雨梨、ナイスアシスト。」
「いえ、先輩大丈夫ですか?」
「うん。平気だよ。行こう。」
大怪我を負ったこの人をここまで動かすものはなんだろう。責任感、正義感…それと使命感だろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます