第160話:ツインテールの君と
凛音目線___
「すまんがお前らは行けない。」
「私達の仲間があそこにいるの。軍だってあそこに人を割く余裕は無かったはず。謹慎中の私達だけでしょ?」
羅希先輩は司令部の2年の先輩と言い争っている。八咫烏病院は2人のいる病院だ。早く行かなければ…。
「先輩、司令部が懸念していることは、司令部の司令外で一般人に怪我させたら、謹慎では済まないからですよね。なら司令部が誰か一緒に行けばいいのではないですか?」
凛とした声。お嬢様の気品が溢れるその声を聞き振り返ると、死んだと思っていた従姉妹がいた。目を擦る。ツインテールは揺れ、フローラルな香りを纏って私の前を通り過ぎた。
「猫音…生きてたの?」
「勝手に殺さないでよ。頭を打って意識無かったけど、瓦礫の隙間にいたから助かったのよ。」
「良かった…。」でも頭には包帯が巻かれていた。それは決して怪我が軽いわけではないと証明していた。
「今はそれはいいから。八咫烏病院は民間人もいるのに、このまま黒軍への報復のために民間人が犠牲にでもなったらそれはそれで問題でしょう。私が行きますわ。」
「だが一条…お前は安静にしろと…。」
「元名門の一条家の跡取りだからって忖度は要りません。私も大和の司令部です。死ぬ覚悟ぐらいしてます。それに私の仕出かした罪の償いは今ですわ。」
「猫音…。」
「凛音、私の命預けるから。私は司令を出して最適解を手に入れる。それでいい?」
「もちろん。」
「凛音、簡単に死なないでよ。それは私の求める最適解ではないから。」
「ツンデレだな。」
「うるさいわね。とりあえず先輩、司令部としてはこれで問題無くなったはずですわ。」
「くっ…。仕方ない。一条、何かあってもお前の責任だからな。」
「もちろんわかってますわ。行きましょう。」
八咫烏病院へ向かう車で猫音は
「凛音、やっと呼び捨てで呼んでくれたね。」とどうでもいいことを口にした。司令部が現場に行くことはほぼない。それでも現場に行くという覚悟を決めた彼女はきっと緊張していたのだろう。
「従姉妹だからね。」
「そうね。」
「玄は?」
「一昨日会ったわ。」
「心配してたよ。」
「知ってる。自暴自棄になってたらしいわ。」
「玄が?」
「そうよ。」
「愛されてるね。」
「あなたも愛されてるでしょ。」
「誰に?」
「まあいいわ。凛音、やるわよ。命は預けるとは言ったけど自分の身は自分で守るから、どんどん進んでいきなさい。」
「言われなくても分かってる。猫音、よろしくね。」
「うん。」
「猫音さん、よろしくお願いします。」
「九万里先輩、こちらこそよろしくお願いします。」
例え一騎当千の力のある羅希先輩が居たとしても、現地の警備員が対応していたとしても、きっとこの現場は厳しいものになるだろう。それでも、私達は刀を握り前に進むことでしか大切な者の元まで行けない。
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