第150話:幸不幸の背比べ

羅希目線___


 発作で倒れた凛音を寝かし、辛そうな顔をしたまま布団をかける凛音のお父さんを見かけた。忘形見で娘なら余計に心配だろう。でも凛音は強い。今も強くなろうと頑張っている。だから信じて待っていてほしい。籠に閉じ込めるのではなくて、首輪を付けるのではなくて、ただ自由にしてあげて欲しい。私の家は放任主義で私も弟も大和進学は何も言われなかったし、卒業後の進路についても言われなかった。軍の仕事が忙しいから結果的に放任主義になっただけだけど、凛音の家を見るとこうも世の中いろいろな家が存在するものだと見せつけられる気がする。雨梨は施設出身だから親はいない。それに比べたらまだ再婚とはいえ両親揃っているなんて幸せだと一瞬でも私は思ってしまった。人の幸不幸なんて他人が測れるほど簡単なものでは無いのに。分かっていたのに。

「すみません。部屋使えないですよね。今出ていきます。」

「いえ、あの四月一日さん。」

「はい。」

「凛音は私の大切な仲間です。私も班員も助けてもらいました。命だけではなくて心も含めて。私達はまだ高校生で子供です。でも互いに支えあって前を見て歩いています。だから凛音のことを私達に任せて貰えませんか?」

「そうですか…。あの子はちゃんと一人の人間だったんですね。すみません。そしていつもありがとう。これからもあの子のことをよろしくお願いします。」

 深深と下げられた頭。凛音はお父さんにはすごく愛されてるよ。でもその言葉は胸にしまっておこう。きっと言わない方がいい事だから。

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