第142話:赤い嘘

蒼桜目線___

「待て。関係者以外立ち入り禁止だ。所属と名前を。」

 相手は黒い学ランに赤いベルト…。きっと黒軍を装った赤軍だ。

「黒軍騎馬兵団所属笠原です。」

「同じく加藤です。」

「同じく齋藤です。」

「何のためにこの陽も昇る前にこそこそ裏から侵入した?」

「大和で急遽馬が必要になり、オーナー様にご挨拶をしようと思って。」

「なら、オーナー様の所に行くので着いてきてください。」と間合いを詰める。相手もまさか山梨まで大和の学生が警備に来ていると思ってないだろう。そしてまさか騎馬兵団まで警備に回されてると思わないだろう。自分達の嘘がバレていると思っていないだろう。

 2人に目配せし、3人の侵入者ににじり寄る。

「やれ。」

 相手の低い一言で6人が刀を同時に抜いた。殺すなという指示を2人に出している。2人は上手く相手の攻撃を交わし、的確に相手を斬って行く。

「お前そこそこやるな。」俺の相手は口元を三日月型に歪ませて嬉しそうに笑っていた。

「何が面白い。」

「いや、昔あんたの目と同じ目をした男と仲良くしてたんだ。似てるからつい嬉しくなってな。」

「知らないよ。そんなこと。」刀の打ちは強いけど、打ち方が乱れ気味だ。相手の脚を斬る。動きが鈍くなった所に左腕を斬り付ける。

「捉えた。」羅希が上手く1人を生け捕りにし縛り上げる。

「くそ!」

「残念だったね、赤軍。山梨の黒軍派の高校が警備に来ていたなら騙せて勝てただろうけど、私達は大和よ。」

「あーあ。やられたな。大和ならそりゃ勝てないか。」

 俺の目の前で気持ち悪く笑っていた男は刀をほおり投げて両手を上げた。

 3人を縛り上げ、直ぐに大和に連絡する。

「凛音大丈夫?」

「大丈夫。ただちょっと生け捕り難しくて…。」

 相手を深めに斬ってしまった凛音はとりあえず相手の止血だけする。山梨の黒軍高校から5人ほど監視役が来たので交代し、返り血で汚れた3人は日が昇ると共に家に帰った。


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