第137話:3人で
凛音目戦___
私たちが帰って来てやっと司令部が爆破された事を知った。きっと生存者は居ないだろうと。そこには数名の司令部がいた。その中に猫音が居たらしい。中央の司令部と諜報部隊を繋げる役目をしていた猫音は結果的に巻き込まれた。いくら電話をかけても、いくら祈っても返信は来ない。
「凛音。」
「玄!さっきはありがとう。」
「いや。いいんだ。凛音、司令部のこと聞いた?」
「うん。玄大丈夫?」さっき助けてくれた時と見違えるほど表情が固まっている。
「大丈夫。」
「遺体が見つかってないから、生きてるよ。返信が出来ないだけだって。」
「猫音様が死んだとは思えない。」
「うん。」
「だけど、生きていても瓦礫が退くのに時間もかかるし、関連施設の民間人救助が優先だ。こっちに来るのには時間がかかる。」
「そうだね。」
黒軍関連施設だけでも救助の手が足りない。民間人救助が優先ということも含めると司令部であっても高等部の学生であっても軍人が救助されるのは後になる。つまり生きてても助けられるのは後になる。その分生きてる可能性は低くなるだろう。玄は他の人にもわかるぐらい震えていた。猫音に拾われ、猫音の為に生きてきた。彼女がもし死んでいたら玄は生きる意味を失う。だからかける言葉なんてひとつも思い浮かばなかった。さっき私も蒼桜にいも雨梨先輩も死んでしまうと思って怖かった。でもそれは生きていると分かってるから怖いんだ。死んでいるかもしれないという恐怖は私には想像を絶する。
「凛音ー!集まれってさ!」奇龍先輩の声。
「分かりました!今行きます!ごめん玄、行かなきゃ。」
「ああ。頑張ってな。」
玄が立ち上がりどこかに行こうとするのを思わず手を掴む。2月の風に攫われそうだった。
「凛音?」
「玄。あのね、3人で、この戦争が終わったらどこかに行こう。3人で。」私のまとまらない言葉を聞いて玄は
「3人でな。」と返してきた。
守れない約束はするなと言われる。もしかしたら私は今守れない約束をしたのかも。でも、私は守れない約束だったとしても約束で繋げてしまえば、この不安でも何も出来ない今をどうにか出来るのではないかと希望を勝手に込めていたいだけだった。
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