第122話:仲間は人間だけではない

蒼桜目線___

 厩舎に行くと凛音が馬着うまぎを取り替えている最中だった。

「おはよう。」

「おはよう。」

「外寒いね…。」

 厩舎はやっぱり暖かい。

「蒼桜にいはこれから外?」

「うん。でももうこの子歳だからあんまり冬は出たがらなくて…。」

「蒼桜にいの馬って何歳?」

「前の持ち主から譲り受けた時が4歳だったから今年で8歳だよ。」

「そっか。でも長生き出来て良かったね。」

「本当にね。」

 近づくと嬉しそうに近寄ってくる。馬の戦闘時の生存率は人間ほど高くない。この子は逆に飼い主を撃ち抜かれて俺のところに来た。新たな主に慣れず引退する馬が多い中よく頑張ってくれたと思う。この子は特にリーダーシップもあるし、奇龍の馬みたいな気が荒めの馬とも仲良く出来る。本当にいい馬だ。この馬が俺の馬だったから、1年の時羅希の馬も爆発に巻き込まれずに連れて帰ってくることが出来た。この子は本当に賢い。

 凛音と別れて馬を外に出す。

「蒼桜君。」

「羅希。」

 放牧地は羅希の馬が来ていた。離してあげると羅希の馬の元に駆け寄り、2頭で走り始めた。羅希の馬は大体5歳で、俺の馬とかなり仲がいい。

「あの子本当に蒼桜君が居ない時元気なくてね。私と雨梨が連れ出しても全然元気出さなかったの。」

「そうなんだ。でも何となく分かるよ。馬ってさ賢くて、ちゃんと分かってるよね。羅希があのトラウマ事件の時に乗っていた時もさ、羅希と会えずに俺に世話をされていたでしょ。周りに共に居た馬が居ないことで死んだことを悟ってたし、羅希に会えない時は本当にしょげてたよ。久しぶりにあった羅希は元気がないから心配していたみたいだったし。」

「あの後私が乗れるようになった後もこの子中々走ったりせずに私を気にかけるような素振り見せてたもんね。」

 俺らの顔を見て嬉しそうにこっちに駆け寄ってきた馬達を撫でると嬉しそうに鼻を伸ばしていた。馬は人間が思っている以上に分かっている。俺も羅希もそんな馬たちに救われているのは間違いなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る