第104話:おちていく

猫音目線__

 落ちていく時、私の上になった凛音は優しい顔をして笑っていた。そして手は強く強く握られていた…。まるで私を1人で落とさないように。風を切る音、心臓の音、ゆっくり凛音の背後へ景色は流れ、恐ろしく長く感じた。

「っっ!」目を閉じ、来るはずへの衝撃へ構えた。

 しかし…あった衝撃と言えば優しくふわりとしたものだった。

「猫音…"ちゃん"。目開けていいよ。」

「えっ…?凛音…?」

 私の顔に凛音の手が当てられ、目をゆっくり開ける。

「猫音ちゃん、もう怖くないよ。」

「り…おんっ…!」

 初めてかもしれない。感情が溢れるってこういうことなんだね。

「泣いていいよ。もうあんな怖い固い笑顔にならなくっていいんだよ。怖かったよね。寂しかったら私の横に来て…いつでも猫音ちゃんが泣くまで一緒にいるから。」

「凛音…。でも、私は、凛音にっ!」

「私は…ちょっと猫音ちゃんの気持ち…分かるから…。」

「凛音!!」

「羅希先輩、雨梨先輩…蒼桜にい。」

「…分からないよ。」

 貴方にはそうやって味方がちゃんといる。

「…猫音ちゃんにもいるでしょ?ほら…。」

 振り返ると、そこには見たことの無いほどの余裕のない顔で駆け寄ってくる玄の姿だった。

「猫音様っ!」

「玄…。」

「猫音様なんでっ!もし本当に死んでしまったらどうするんですか!」

「ほら…。これは主従じゃないって…言わなくても分かるよね。」

 頷くと凛音は笑って、良かったと言った。

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