第100話:俺のせい

雨梨目線――

 外が暗くなった頃、蒼桜先輩が病室から出てきて

「寝てるよ。帰ろう。」とだけ言った。誰も何も口に出せないこんな日。

 蒼桜先輩が

「黒軍に入れてしまった俺の責任なのかもな。」と呟いた。

「違うよ!誰の責任でもない!凛音が決めたこと。それに誰もこんなこと起きるとは思わない。」と羅希先輩がすかさず言う。

「そうだよね…。」

「凛音はどうでした?」

「今にも死にそうな目をして震えていた。」

「弱ってるみたいだね。」

「体もだけど、トラウマと容疑者として病院に隔離されてる時点で普通の人なら精神は保てないよ。」

「凛音はなんて言ってた?」

「やってないって。猫音さんが撃ってきて、それで拳銃を奪おうとしたら発砲したらしいけど、トリガーには触れていないって。」

「なら、その拳銃を手に入れれば無実が証明されるってこと?」

「うん。だけどどこにあるんだろう。桐谷先生がもし拳銃を持っていたら回収しているはずだけど、今の状態じゃ何も話せないな。」

 桐谷先生は流石としか言えない回復スピードで山場を越え、さっき目を覚ました。桐谷先生は当たりどころが悪くなかったため、数は多いものの意思疎通は多少なら出来る。風見先生は数は少ないものの当たりどころが悪くまだ目を覚まさない。

「桐谷先生の奥さんはそういうものは見かけなかったって言ってたよ。」

「そっか…なら屋敷にあるはずなんだが…。」

 すると、目の前から玄が歩いてくるのが見える。

「玄!」

「…こんにちは。」

「ねぇ、拳銃、屋敷にない?」

「ないですよ…。」

 目を逸らした。何か隠そうとしている?

「じゃあ何か知っていることはない?」

「さぁ、こちらも本人が話さないので。」

 あまりの態度の悪さに羅希先輩がイライラしてるのが分かる。

「人が何人も傷ついているんだよ?」

「だとしても、俺は猫音様の部下です…!」

 しまったという顔をして彼は走り去っていった。

「犯人は分かってるのに証拠がない。」

 蒼桜先輩はそう下を向いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る