第57話:気づけよ

蒼桜目線______

「班長ー。」

「羅希。どうした?」

 近所のスーパーの袋を持ってくる羅希。

「班長の携帯に連絡しても反応ないからさー。探したんだけどー!明日帰るの?」と俺の好きなジュースを袋から出す。

「ありがとう。まあね。凛音も待っているし、書類も終わったからねー。」

「いいなぁー。」

 それは凛音のことか、書類のことか…。

「班長はさ、サク先輩のこと覚えてる?」

 サク先輩…俺らの二個上の班の先輩だ。本名がさくらくるみだから"サク"と呼ばれていた。

「もちろん!」

「サク先輩がね、一度私にこう聞いてきたことがあるんだ。『羅希ちゃんの好きな人に好きな人が出来たら羅希ちゃんは諦める?』って。」

「サク先輩好きな人が居たんだ!」

 初知りだ…恋愛とか興味なさそうだったし。

「多分桐谷先輩だと思う。」

 思わず吹き出す俺に構わずに羅希は話を続ける。

「私はね、そんなことも知らずに『好きな人がフリーになるまで待ちます!』って答えた。」

「うん。」

「するとねサク先輩は『そうか!そうだよね!』って笑ってた。今思うと酷なことしたなぁって思って。」

「うん。でも恋心はどうにもならないじゃん。」

「恋する乙女みたいな発言だね。…でもそれ聞いて安心した。」

 さっきから羅希が何を言いたいのかわからない。

「班長はね、凛音を手放したらいけないよ。せっかく両思いなんだから。」

 もう一回盛大に吹き出す。

「私が気付いてないと思った?」

「うん…。なんで?」

 分かったの?という言葉が続かなかった。

「女の勘よ。まあ、飲もうか。ジュースだけど!」 笑ってジュースを飲み誤魔化された。


 羅希はそれを言いたかったんだろうか…?

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