第42話:再

羅希目線_____

「あーっ!もう!羅希先輩なんで出歩いてるんですか!?まだ安静にって!」

 寮を出て早々に凛音に見つかった。

「もう大丈夫よ。」

「だめです!今日だって熱気味なんですから!」

「凛音小姑みたい。」

「小姑でもなんでもいいですからおとなしくしておいて下さい!」と部屋に無理やり戻された。

「そろそろ馬乗らないと体力落ちるんだけど。」

「だめです!」

「おやつだって外で。」

「そう言うと思って先輩の好物作ってきましたよ!」

 笑いながらケーキを見せてくる。

「あっ!ケーキ!」

「ちゃんとあげるのでおとなしくご飯食べて下さいね!」と冗談ぽく笑いながら準備する凛音に

「私は子供じゃないんだからー!」と投げかける

 凛音はいいお嫁さんになるね!とも言おうかと思ったけどまだ言わない。戦争の後一段と仲良くなった蒼桜君と凛音。戦争後はカップルが出来やすい。吊り橋効果ってやつ。二人もそうなのかなって思ったりする。

 もしそうなった時は…?どうするんだろう。賛成して背中を押す?それとも?なんかぼーっとしてきた…。

「羅希先輩?」

「ん?ごめん、ちょっとぼーっとしてた。」

 するとおでこをつけてきて、

「あーっ!また熱が出てますよ!ケーキはおあずけです!」とベットに無理矢理押し込められる。

「ちゃんとおとなしくしないとだめですよ!」と体温計と濡れタオルを準備する凛音。

 熱は38.5度。濡れタオルが気持ちいい。そう思っていたらいつの間にか夢を見ていたみたいだ。だっているはずのない貴方が目の前にいるから。



「桐谷先輩…」

 信じられない。

「九万里また熱出すまで無茶しやがって。」

「先輩っ!」

「って泣くなよ!」と優しく抱きしめられる

 懐かしいや。

「ずっとずっと会いたかったんですよ!私っ…私のせいで。」

 涙が止まらずに上手く言えない。

「俺らが死んだのは九万里のせいではない。俺らが運も実力もなかっただけだ。それだけの話だ。それに…俺は、お前が生きていて良かった。お前と神咲に沢山背負わせてしまって、だめな先輩だったし、もっともっとお前に彼氏らしいこと出来なくて、だめな彼氏だったけど。お前が生きてくれていればそれでいい。」

「私は嫌です!先輩がいなきゃ意味がないんです!先輩がいなきゃ…私はどこにいればいいんですか!」

「そんなことない。お前からは見えないだろうけど、俺は隣から見ていたんだ。苦しくて泣いてる時も、戦場でそれを紛らわせて鬼と呼ばれていた時も、後輩が出来て先輩らしくなった時も。お前はもう俺無しでも大丈夫だ。ほら、居場所はあるんだからな。俺に縛られるな。振り向けば神咲の率いる居場所があるだろ?

 大丈夫。俺はずっと隣から見守り続けるから。」

 するとみるみる大好きだったあの人の影が薄くなって…

「晴人君っ!!!」

 叫ぶと同時に消えていった。

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