第34話:得意な事

雨梨目線_____

「姉ちゃんと凛音を返せよ!」

 何かの機械の裏から僕と瑞樹は様子を伺っている。

「姉ちゃんと凛音を返せよ!」

「それは無理だな!そうだ、これから再会の記念としていいものを見せてやるよ。」と羅希を足元に転がし踏みつけながら言う。

 羅希先輩!今は出て行けれない。こんなに近いのに!

「てめぇっ!!」

 拳銃を向ける奇龍。奇龍…撃ったらだめ。

「後輩ちゃん…凛音ちゃんだっけ?その子の命は俺が握っていることをお忘れなく。」

 手出し出来ない。飛び出せば凛音が殺される。そしてそいつはゆっくりスイッチを持った手を上にあげ。

「うっ!あぁっ!!っっ!!」

「さぁ、吐け。お前の班はだれがいる?いや、もう間接的に聞くのはやめた。神童はどこだ?もちろん岩倉のことだ。」

 岩倉…僕の偽名。僕目当てだったの?

「蒼桜先輩!」

 奇龍の叫び声に近い声が僕の頭に響く。

「奇龍待って。今下手に動けないっ…!」

「でも姉ちゃんが死んでしまう!」

 っ…!羅希先輩が死んでしまう…。助けないと。ここなら相討ちになっても助けられるかもしれない。ゆっくりとすぐに飛び出せるような体重移動をする。

「今動いたら最悪の場合、二人とも助けられない。」

 蒼桜先輩の声が体を貫く。冷静じゃなかった。なんとか凛音の場所さえ分かれば…。

「玄です。管理室制圧しました。そして凛音のいる場所分かりました。奴の後ろの壁の凹みを押すと入り口だと思われます。」

「…ありがとう。瑞樹、瑞樹はここで合図したら出て来て。それまではここから一歩も動かないで。」

「分かった。」

 心臓が飛び出そう。だけど…僕の得意技。ここで使うしかない。

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