第22話 お風呂と消えたアレ
「学校はどうだ?」
食事中にダンダが聞いてくる。何しろ口と鼻が完全に独立している大球人は、食べるのと同時に話すことができる。
「まあ普通かな。特に変わったこともないし、そういえば、」
「そういえば?」
「おヘソって人前で口にだすとダメな言葉なのかな。」
「ああ、まあ普通は言わないかな。おケツとか言わないのと同じだ。」
ダンダの言葉で、さっきの謎はいちおう解けた、かな。
「ちょっと下品ですよ。」
とマイマの指導も入った。
「あー、すまん。つまりあまり言わないほうがいい言葉だ。誰か言ってたのか?」
「クラスの男子が言って、女子が何か怒っちゃったからダメなのかなと思って。」
ちなみにクラスの男子と女子というのは僕とライラのことなので、嘘は言ってない。
「でもお尻はわかるけど、おヘソがダメなんだ。」
と疑問な点を聞いてみる。
「まあ慣習というか、下着で隠されている部分だから人には見せないし、言葉に出したりもしないのが礼儀だな。」
なるほど。
「そういえば結婚して欲しい相手に、君のおヘソを見せて欲しいと言ったりすることもあるんだ。」
ほうほう。これは下着で隠されている部分を見せるほど親密になろうというような意味なのかな。日本だと僕の為にみそ汁を作って欲しいみたいな言葉をマンガで読んだことがあるし、別のマンガだと絵を書くのを手伝ってあげるというのが宇宙人のプロポーズの言葉だった。
「あなた、子供にあまり変なこと言わないで。」
「すまん。だがカンカも将来は誰かすてきな人を見つけて結婚するのだろうから、今から準備しておいてもいいのじゃないかな。」
などとマイマとダンダの話は続いていたが、僕は特に口をはさまずに食事を続けた。大球人は口ではなく鼻で話すので、口ではなく鼻をはさまずとなるのかな。
「そろそろお風呂に入りなさい。」
食後もテレビをみたりしてのんびりしていた僕に、マイマが言った。ちなみに前後に目があると後ろ側にテレビがあっても見ることができるのが便利だ。
「はーい。」
とめずらしく素直に返事をする僕に、ダンダが、
「たまには一緒に入るか。」
と声をかけるが、僕の身体の持ち主であるカンカが父親と一緒に風呂に入ってたのは何年も前のことなので、これは冗談だろう。
なので僕も、
「いやひとりではいるよ。何ならマイマと入れば。」
と冗談で返して、風呂に入るために部屋をでた。後ろの目でダンダがにやりとしたのが見えた。
浴室は朝に使った洗面台の奥にあって、水周りを近くにまとめる設計は地球と同じみたいだ。浴槽との間にカーテンみたいな仕切りがあるのがビジネスホテルのユニットバスみたいだけど、ホテルのユニットバスだと便器がある場所にはシャワーや蛇口があって洗い場になっている。だから身体を洗うときに泡とかが浴槽に入らないようにするためのものなんじゃないかと思う。
シャワーは手動でオンオフもできるけど、自動にすると最初はお湯で次に石鹸、そしてまたお湯みたいに一通りでてくるみたいなので、自動にしてみた。というか無意識のうちにいつもやっているように自動のスイッチを押して、それから関連する記憶が頭に浮かんだというのが正確なところだ。
ぬる目のお湯が頭上のシャワーから出てくるので、全身にまんべんなくかかるようにする。しばらくすると泡まじりになるので、最初は髪の毛を洗う。前後に目が付いてる大球人の頭髪は地球人と比較すると少ない面積だけども、やはり髪は身体とは別に洗う。シャワーが一度停止している間に髪を洗うと、温水が再開するので頭の泡を流す。
次に身体を洗う用の洗浄剤入りのお湯が出てくるので、全身を洗う。カンカは特にスポンジなどは使っていなかったようなので、僕も素手で身体をあらう。手のひらで上から下まで軽くこするように洗い、お尻の部分も指で洗う。反対側のヘソの周囲もお尻みたいになってるので、お尻と同様に指で軽くこする。少しくすぐったい。そして男の子の大事な部分も清潔を保つために洗うのだが、
「あれ、無いぞ。」
アレが無かった。微妙に位置は違うものの地球人の男子と同じように股にあるはずの、性器のでっぱりがなかった。
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登場人物
カンカ:僕の一時転生を受け入れてくれた男の子?
マイマ:カンカの母親。
ダンダ:カンカの父親。
ライラ:カンカの幼馴染。
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