第15話 大球世界の学校 給食

給食は、あらかじめ配膳されたものが載せられたカートが廊下にあるので、そこから各自でとっていく。フタ付きの四角いトレイ兼用の食器なので機内食みたいだ。メニューが何種類かあって選べるのも機内食風だ。班ごとにとりにいくのだが、不公平にならないように順番は定期的に変わる。


僕が選んだのはメイン料理がブタのソテーのもの。スティック状に切られた肉が、同じくスティック状の野菜と一緒に焼かれている。あとはミックスベジタブルみたいな小さくカットされた複数の野菜が入ってるサラダみたいなものと、牛乳みたいな飲み物とフルーツだ。牛乳はヨーグルトみたいな丸いフタ付きの容器に入っている。そういえば機内食でもこんな容器に入った水が出てきたことがあった。

他にパンみたいなのがあって、これは班のテーブルの真ん中にまとめて置いてあるのから各自で取るようになっている。


「いだだきます。」


全員で開始の合図をするのは地球の小学校と同じだ。皆がいっせいに食べだすが、各自の食べ方に違いがあって面白い。ドンドは口を前に向けて食べる方式のようで、片手にパン、もう片方にスプーンを持ってばくばく食べ進んでいく。タニタはお上品な感じで、パンを小さくちぎって口に運んでいく。身体の向きもそのままで、口はテーブルに対して横向きだ。

僕はその中間というか、口を少しテーブルに近くなるように斜めにして、食べ始めた。味は普通だけど、おかずは温かく、牛乳やフルーツはひんやりしていて美味しく食べられた。


「なあ、余ってるパン食べていいか?」


と、ドンド。一人あたり2個の丸いパンが班ごとに配られているけど、タニタのように1つしか食べない子もいるので、いくつか余っているのだ。

タニタは口の中で食べ物をもぐもぐさせながら、


「いいよ。」


と短く言った。口で何かを食べながらでも、鼻で言葉を話せるというのが地球人とは違う大球人のメリットだ。


「いいんじゃないの。」


と僕。自分の分としての2個は食べてるけど、おかわりはいいよという意味だ。班のほかのメンバーからも異議はでなかったので、ドンドはパンに手を伸ばした。


「きょうもうまかった。やっぱり魚よりも肉だな。」


ドンドも僕と同じくポークソテーを選んでいた。タニタは魚だった。


「魚はどうだったの?」


とタニタに聞いてみる。


「ん、美味しい。」


まだ食べているタニタが答える。


「何の魚だっけ。」


「たぶんヒラメ。」


こっちの世界にもヒラメみたいな魚は存在して、やはり身体の片側に目が寄っている。


「ヒラメって変な顔だよな。顔の片側に目が並んでて。」


おかわりのパンも食べきったドンドが会話に入ってくる。


「宇宙人みたい。」


タニタはさっきの話を覚えていたのか、そんなことを言う。


「いくら宇宙人でもそんな変な顔の奴はいないだろ。」


それがいるんだよドンド君。でも僕も頭の前後に目が付いているなんてのは想像もしなかったからおあいこだ。



「ごちそうさま」


全員が食べ終わらないでも、決まった時間になれば各自で終わりにしていいみたいだ。ドンドをはじめとして、食べ終わっていた何人かが教室を出ていく。

僕は最後にとっておいたフルーツを食べていた。最初に味見をしたけど、残りはデザートとして最後にとっておいたのだ。リンゴのような食感で味は酸味が強く夏ミカンなどのかんきつ類っぽい味と香りだ。朝に食べたのも味は似たようなものだけど、家のはもっと小さかったのでリンゴに対する姫リンゴみたいなのかも。


「ごちそうさま。」


最後のデザートをゆっくり食べていたら、隣のタニタも食べ終わったようだ。二人で食べ終わった食器を返しに行く。廊下にあるカートに戻すのときに少し観察したところだとトレイのこちらは保温でこちらは保冷というように、場所によって保温と保冷ができるようになっている。だからおかずは温かく、フルーツは冷えていたのか。


「何してるのよう。」


カートを観察してるところに声をかけてきたのはライラだった。眼鏡をかけた方をこちらに向けて、手には食器を持っていたので邪魔しないように脇にどいた。

食器を返却したあともその場でこっちを見ていたので、何をしてるかというのは答をもとめてのものだったらしい。


「えーと、カートの仕組みを見てたんだよ。ほら、こっちが温かくてこっちが冷たくなってる。だから食べるときもおかずは温かく、フルーツは冷たくなってるんだ。」

カンカの記憶にカートの仕組みに関してのものはなかったので、興味を持ったとしても不審なことは無いだろうと思って説明してみた。身近なものの仕組みに関心を持つのはよくあることだろう。


「そうなんだー。それじゃ。」


そういってライラは向こうのほうへ歩いていった。眼鏡をかけていないほうの顔をこちらに向けている。後姿にも目が付いているというのには、どうもなれない。


僕の後ろ側では、タニタがこっちを見ていた。



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