第204話 艶髪の母娘


 さて、サツキとオトが感動?の再会を果たしていた時に別の再会を果たしたグループもあった。


『久しぶりですねトーノ、ヨミ』

『おう久しぶり!』

『久しぶりだなユウガオ』


 嬉しそうなヨミと優しい笑みを浮かべるトーノ。

 二騎はアント達と来た母娘晶霊と立ち話をしている。


 瑠璃色の髪と青い肌をした楚々たる美人?で育ちの良さが垣間見える晶霊である。

 穏やかそうな性格は娘にも受け継がれているらしく、こちらも瑠璃色の髪に青い肌をした晶霊だ。

 まだ幼く小さい娘晶霊の方はもじもじと母親にくっついている。

 まあ、小さいといってもすでに3mぐらいはあるのだが。


 それをみてきょとんとする刀和。


「二人とも知り合い?」

『知り合いと言うか……』

『トーノの元嫁だよ』

「……えっ?」


 その言葉に微妙な顔をする刀和。

 だが、そんな刀和にヨミはくすりと笑った。


『先に言っとくが終婚の方だからな。離婚じゃないぞ?』

「終婚?」


 刀和が不思議そうな顔をするがトーノは苦笑する。


『おいおい。トワは妙に知らんことが多いな? 大丈夫か?』

『仕方が無いんだよ。そういう生まれなんだから』

『ジクーがわかるのに終婚を知らんとは……物を知っとるのか知らんのかわからんな……』


 困り顔になるトーノだが、何のことか思い出す刀和。


「あ、そうか。晶霊の場合、『期間限定での結婚』になるのか」

『そういうことだ。まあ、同じ相手とずっと結婚を繰り返す場合もあるがな』

『流石に知ってたか』


 ヨミとトーノが苦笑する。


 晶霊の場合、生涯に何度も結婚するのが一般的で、一年ほど結婚して、その後は別れるを何度も繰り返すのだ。

 刀和が不思議そうに首を傾げる。


「そういうのってどうなの? なんか気まずくなったりしないの?」

『それが普通だからな』

『特に気にならん』


 大雑把な性格が多い晶霊の場合は割とこの辺がいい加減である。

 とはいえ、こう言った形になるのも理由がある。

 すると、刀和の後ろから声がかかった。


「晶霊の場合は家長が女性なので、男の方があっちこっちに行くことが多いんです」

「へぇ……えっ?」


 思わず後ろを振り向く刀和。

 後ろに居たのは綺麗な青髪をした楚々たる美人だった。

 黒の縞模様が入った緑の服を着ており、穏やかそうな仕草がホッとさせる。

 そんな美人がにこやかに笑いかける。


様ですね?」

「は、はい! あの…………どなたでしょう?」

 

 美人がにこやかに笑ってお辞儀する。


「ユウガオの相棒でシラツユと言います。今後ともよろしくお願いします」

「は、はい! よろしくお願いします!」


 何となく緊張して頭を下げる刀和。

 すると、刀和は自分のお腹に違和感を覚える。


ぷにぷに……


 シラツユによく似た綺麗な女の子が刀和のお腹をぷにぷにし始めた。


「えっ……と……」


 10歳ぐらいだろうか?

 綺麗な顔立ちの女の子はひたすら刀和のお腹をぷにぷにする。

 そしてシラツユの方を見て目を輝かせた。


「お母さん! これぷにぷに! 超ぷにぷに!」

「あらあら……」


 口に手を当てて、ほほほと笑うシラツユ。

 刀和も優しい微笑みを浮かべて女の子の頭を撫でる。


「気持ちいいかい?」

「うん!」


 嬉しそうにぷにぷにを繰り返す女の子。


「すみません。この子は優しそうな人を見るとすぐにこうやってなつくんです」

「良いですよ。こういうの慣れてますから」


 にこやかに微笑む刀和。


(お祭りで子供会の面倒見た時もよくあったよな……)


 昔を懐かしむ刀和。

 故郷の町内会ではよく六人でお祭りに参加していたので子供の面倒を見ていた。


(なんでか知らないけど僕のお腹を撫でたがる子多かったなぁ……)


 子供になつかれ易い刀和は子供会の面倒を見る時間が長いので必然的に扱いに慣れた。


(英吾は何故かしょっちゅう襲われていたけど……)


 ちなみに同じ友人の英吾は何故か子供たちのやんちゃの的になっていた。

 とは言え、そうなると子供の違いにも目ざとくなる。


なでなで……


 女の子の頭を撫でているとその心地よさに思わずはっとなる刀和。


「にゃー……」

 

 女の子は嬉しそうに頭を撫でられている。

 手触りが物凄く良いのでついつい長く撫でまわしてしまう刀和。

 何となく悪いことをしてる気がした刀和は誤魔化すように言う。


「物凄く綺麗な髪ですね」

「ええ。私もこの子も髪が綺麗とよく言われます。艶櫛つやぐしって言うんですよ? この髪」


 そう言ってふぁさっと髪を広げるお母さん。


「はぁー……」


 そのあまりの綺麗さに思わず見とれてしまう刀和。

 すると、それを見た女の子も同じように髪をふぁさっと広げる。


ふぁさっ


 流石に母親のように艶やかにはならないが、綺麗に髪が広がった。


「ねえねえ!ルリの髪はどう?」

「とっても綺麗だったよ」

「超嬉しい!」


くるくるくるくる……


 嬉しそうに空中でくるくる回るルリとそれを見てにこやかに微笑む刀和。

 そんな刀和にシラツユが頭を下げる。


「親子でご迷惑おかけしますが、今後ともよろしくお願いします」

「は、はい!」


 刀和も慌てて頭を下げた。





登場人物紹介


 シラツユ


 ユウガオの相棒で34歳。

 綺麗な髪をしており、都でも美人と評判だった。

 ちなみに艶櫛つやぐしとは僕の造語でツヤツヤの髪のことです。


 ちなみに名前の由来は夕顔の地歌より抜粋。




 ルリ


 玉鬘(たまかずら)の幼名『瑠璃』より。

 玉鬘とは綺麗な髪を指す言葉だと、最近になって初めて知った。


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