第178話 勝利の宴


 そして翌日の夜。


 後始末を終えた一同に待っていたのは宴会だった。


「皆さんありがとうございます。お陰で助かりました」

『どうもありがとうございます』


 深々と挨拶するトサ国の国司と小毅。

 何名かの晶霊が犠牲になったものの、結果的には国都は無事で大きな破壊も無かったので、大団円と言った所だろう。


 その日はささやかながらも宴会になり、全員が飲むことになった。


「ふぅー」


 刀和はのんびりとあたりの様子を伺いながらまったりとしている。

 ラインが隣で刺身を食べている。


「何か美味いな……何の魚?」

「スジガツオです」

「へぇー。もっと頂戴」

「はいはい」


 遠慮なく貰おうとするラインに苦笑する刀和。

 すると、九頭竜の老婆アマラがふわふわと近づいてきた。


「ほら、刀和。お前が一番活躍したんだから飲め」

「はあ、ありがとうございます……」


 言われて微妙な気持になる刀和。

 なんだかこの老婆は妙に親し気に対応するので違和感を感じるのだ。


「すんません。アマラさんが応援に来ていただいたので何とか撃退することが出来ました」

「なぁに。それぐらいは大したこと無いわい。お前さんの為じゃからな」

「は、はぁ……」


 アマラの態度に違和感を覚えまくる刀和。


(会ったこと無いのに何でこんなに優しいんだろ?)


 不思議そうにする刀和にラインが尋ねる。


「なあトワ。この婆さんはトワの知り合いなのか?」

「そのぉ……昨日初めて会ったはずなんだけど……」


 そう言うとアマラも困った顔になる。


「おお。そうじゃったな。。これから頼むぞ刀和」

「は、はい……」


 不思議な物言いに首を傾げる刀和。

 すると、アマラがこう言った。


「しかし、随分と太ったのぅ……

「……へっ?」


 刀和がきょとんとする。


(僕は痩せてた時期が無かったはずだけど……)


 父親が製菓会社に勤めていたので、余ったお菓子を処理することが多かったのだが、甘い物が苦手な父は全部刀和に挙げたのだ。

 そのおかげで小学生に入る前からずっと丸々と太っていた。


(……誰かと間違えているのかな?)


 刀和がモヤモヤしていると、今度はヱキトモが現れた。


「流石ヨミの相棒だ。すぐに能力に目覚めるとは……見た目と違ってやるなぁ」

「ど、どうも……」


 今日のヱキトモは割と嬉しそうで絡むような雰囲気も無い。

 安心して酒を頂く刀和だが、すぐに顔を引き締めて言った。


「……あの二人に心当たりは無いか?」


 それを聞いて刀和は一気に気持ちを引き締めた。


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