第162話 斥候
翌週
10騎の晶霊がトサ国へと向かう途上に居た。
だが、その足取りは非常に重い。
『結局、そのシラミューレってのは何なんだ?』
歩きながらトーノがヨミに尋ねる。
『なんて言ったら良いのやら……』
困り顔になるヨミ。
その顔を見て訝しむシュンテンが尋ねる。
『言えないとでもいうのか?』
『言えないというか……説明がしにくいんだよなぁ……』
悩むヨミを見て不思議そうにする刀和。
ちょっと珍しいヨミの姿に刀和も困惑する。
刀和も少し尋ねてみる。
「そのアウルを霧散するってのはどういうことなの?」
『あー……目に見えない粒子を放つってだけなんだよ。戦闘中はほとんどがアウル噴き出しながら戦うだろ? だからそれが使えなくなるんだわ。ミノ〇スキー粒子みたいなもんだな』
「ふーん……うん?……うん……」
何となく会話に違和感を感じた刀和だが、もっと重要な話があると思い、話しを続ける。
「でも粒子が辺りに舞っているだけなら、内側から出すアウルは問題ないんじゃ?」
『そもそも俺たちのアウルってのは身体の周りに纏っているのを一部に集中して噴き出させているだけなんだ。デカい風船の中に入り込むような感じだ。デカい風船も一部に集中して出すから強いけど、風船に穴が開いたり中の空気が無くなったりすると噴き出してくれないだろ?』
「なるほど……」
納得する刀和。
だが、周りの者はそうでもない。
「よくわからねーな」
シュンテンの相棒のヱキトモも困惑している。
「そのアウルが使えないってのが分かんねーけど、要は妖術を使う生き物ってことだろ?」
『まあ、そんな感じだ』
ヨミが苦笑して答える。
シュンテンが不思議そうに尋ねる。
『よくわからんが、とにかく近くだと駄目なんだな?』
『そうだ』
『では俺の『必中』ならどうだ?』
そう言って弓を掲げるシュンテン。
普通の倍以上はある太く大きな弓で、明らかに普通の晶霊では引けない弓だ。
現にアカシもトヨタマも頑張ってみたが無理だった。
ちなみにアカシとトヨタマは今回留守番である。
アカシは行こうとしたのだが、ヨミの反対でお流れになった。
そんなヨミはシュンテンの弓を見て困り顔になる。
『本来は弓矢での攻撃が可能だ。だが、今回は弓矢が効かんと聞いているからなぁ……』
『それは何かわからんか?』
『俺にもわからん』
そう言って困るヨミ。
『シュンテンの『必中』と『拡張』があれば苦労せずに倒せるはずなんだが、その弓矢が効かんというのがわからん……そこを解かんとダメだろうな……』
苦い顔で辺りを見渡すヨミ。
辺りは山々に囲まれた地域で見通しが悪い。
上を見てヨミは尋ねる。
『どうだライン? なんか居るか?』
「わからん! だがそのシラミューレってのは居なさそうだ!」
上でイクトゥルに乗って偵察しているラインが答える。
ラインはいつもの4人と共に上から様子を窺っている。
こんな形で人間の方が偵察に適しているのも、共存する理由の一つである。
ラインは辺りを見渡しながら考える。
(他の獣の接近には気を付けんと……)
辺りには何もなく、強い風が吹き荒れているだけである。
ヒュゴォォォォォ……
ラインの頭の上には強い風が吹き荒れている。
この世界でも上空は風が強い。
元々、
そして、風は何も遮るものが無いところほど強い。
そしてその風を利用する獣も居るし、そういった獣は総じて大きく危険である。
(強い風が吹き荒れていると、風に乗った奴らの急襲がある……)
風に乗って獲物に急接近してガブリというのは良くある話である。
特に巨大生物でも、風に乗ると高速で移動するのでシャレにならない。
そんなことをラインが考えていると、一緒に監視しているサダカゲが声を上げる。
「若! あれを!」
「……なんだありゃ?」
ラインの顔が凍り付いた。
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