第137話 試合


 色々あったのだがロリババアが一人加入することになった西海太宰府軍。

 モミジ=ナイシノスが訪れたことで太宰府には大きな変化が起きていた。


『やぁ! 』

『はぁ! 』


 パシィン!パシィン!パシィン!


 大型の竹刀同士で打ち合う音が太宰府にこだまする。

 気合の入った掛け声で真面目に組手するヨミとトーノ。


『『『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』』』


 いつになく真面目に組手している二騎に全員が半眼になって見ている。

 それもそのはずでその様子をナイシノスが嬉しそうに見ているのだ。


『中々勝負が決まらないわねぇ……』


 鉄扇で口元を隠しつつぼやくナイシノス。

 それを遠目で見ているタマヨリが不思議そうに見ている。


『あれは何をやっているんですの? 』

『なんでも勝った方と合体してあげるとナイシノスが言ったので、ああやって組手をしているそうです』


 苦笑してそれにこたえるフキアエズ。

 だが、タマヨリは納得がいかない。


『それにしちゃ長くやってますわね? 確か一刻前にもああやって打ち合っていたような……』

『ええ、だから一刻前からずっとやってるんです』

『膠着状態ってやつですわね』

『そうとも言えませんよ? 』


 クスクスと笑うフキアエズ。


『前にヨミと兄さんがやり合ったときは竹刀が弾け飛びましたから。本気でやり合ってたなら、あんな長く戦ったりしませんよ? 』

『つまりあれは……』

『どっちも負けようとしている八百長試合ですね』

『かえって白熱した戦いになってるようですわね』

 

 一時間も負けようとずっと戦う二騎。

 すると突然二騎同時に崩れ落ちた。


『『ぐはぁ! 』』


 ヨミは倒れて足を抱え、トーノは倒れてお腹を押さえた。


『なんて早い斬撃だ……俺の足がもってかれちまった……』

『なんて早い突きだ……俺の腹に風穴が開きかけたぜ……』


 そう言って互いに痛がる二騎。

 タマヨリは不思議そうにフキアエズに尋ねる。


『あたしには適当にやられた振りをしているようにしかみえませんけど? そもそもどこも打たれて無いですわね? 』

『僕にも同じように見えるよ』


 実際、二騎同時に抗議している。


『そんな早い斬撃入れた覚えねーよ。何嘘ついて負けようとしてんだよ! 』

『お前だって嘘ついてんじゃねーか。そんな早い突き入れた覚えねーよ! 』


 二人して言い合いになるが、決して拳を出そうとしない。

 出せば嘘ついてるのがバレるからだ。


『お前さっき竹刀をこう動かして俺の足を切ったじゃん。お陰で俺の足は使い物にならなくなっちまった』


 全く怪我していない右足を抑えながら叫ぶヨミ。


『お前さっき竹刀をこう動かして俺の腹を突いたじゃん。お陰で俺は一生酒が飲めなくちまった』


 打撲の跡すらないお腹をさすって言い返すトーノ。


 段々と言い合いに発展していく。


『おまえが! 』

『いやお前が! 』

『すとーっぷ! 』


 そう言って二騎の言い争いを止めるナイシノス。

 彼女は呆れながら朗らかな笑顔を見せた。


『もういいわ……』


 その言葉を聞いて同時に小さくガッツポーズを取る二騎。


((よっしゃ! 諦めてくれた! ))


 だが、ナイシノスは扇で口元を隠しながら嬉しそうに言った。


『仕方ないから二人とも合体してあげるから……これ以上喧嘩するのは止め……『『さよなら~!』』……ちょっと待たんかい! 』


 ドドドドドドドドドドッ!


 痛めたはずの足と腹を全く気にせずにダッシュで逃げ出す二騎。

 慌てて追いかけようとするナイシノスだが、既に遠くに行ってしまった。

 悔しそうにふくれるナイシノス。


『折角こっちに来たのに全然相手してくれない! 欲求不満だし! 』


 そう言って地団駄踏むナイシノス。

 すると後ろから声がかかってきた。


『欲求不満なら私が相手しましょうか? 』

『うん? 』


 後ろに居たのはアカシだった。

 いつものポニーテールを風になびかせながらにこやかな笑みを見せるアカシ。


『噂に聞くナイシノス様にぜひともご指導いただきたいので』

『ふーん……』


 面白そうに笑いながら扇で口元を隠すナイシノス。

 その白魚のような手で扇をパチンと閉じた。


『いいわよぉ? 』

『それでは! 』


 そう言って竹槍を構えてアカシはナイシノスに向かって行った!


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