第52話 秘策
にやにやと笑う海賊ダンケル。
一方で倒れかけのトヨタマと瀕死のアカシ。
黄衣の剣士ヨミは状況の悪さに苦笑した。
『さぁーて……どうするね? 』
余裕綽々で腕組みして見せるダンケル。
『こうする』
すると、ヨミはとんっと跳んでトヨタマ、アカシの傍へと近寄る。
『お前は動けるか? 』
『わたしは……何とか……』
肩で息をしているトヨタマ。
それを見てヨミは言った。
『お前は何とか一人で逃げろ』
『それは……出来そうだけど……アカシが……』
『もう行って……私は……何とかするから……』
『そんなこと出来るわけないでしょ! 死ぬときは一緒よ! 』
そう言ってアカシに怒るトヨタマ。
アカシは脇腹をやられており、血も多く流している。
これ以上は歩くのも難しいだろう。
するとヨミはこう言った。
『アカシは俺が連れて行く。お前は先に外へ逃げろ』
『でも……どうやって……』
トヨタマが不思議そうにするとヨミはアカシに声を掛けた。
『アカシ……合体しよう』
その言葉にトヨタマは凍り付く。
『がっ……たい? 』
その言葉を聞いてトヨタマは絶句する。
一方、ヨミの内部の刀和はきょとんとしていた。
(あの……合体って?……)
(俺達晶霊は身体を融合させることが出来るんだ。そうなると脇腹の傷も無くなるし、俺も両腕になる。いいとこづくしなんだ)
ヨミはそう言って真剣な顔でアカシに語りかける。
『今のままじゃ負ける! 合体するしかない! 』
『えっ……それって……』
『い、いきなり、ここで!? 』
困惑するアカシとトヨタマ。
だが、ヨミは必死でお願いする。
『元々合体はこういったピンチにお互いの力を借りるために生まれたやり方だ! 俺は両腕を使えるようになり、君は脇腹の傷が無くなる! これしか打開する方法が無い! 』
『で……でも! 』
『早くしろ! 死にたいのか! 』
『そんな……』
『俺を信じろ! 絶対に悪いようにしない! 』
ヨミに急かされて、困惑するアカシ。
その様子に違和感を感じた刀和が再び尋ねる。
(なんとなく、変な空気が漂ってる気がするんだけど? )
(気のせいだ! )
(別に副作用とかあるわけじゃないよね? 時間制限があるとか、解除してからなんかあるとか? )
(俺は今まで何百回と合体したがそういったことは一切ない。まあ、疲れるから時間制限はあるけどな)
(どれぐらい? )
(今までの最高で一時間ぶっ続けで合体した)
(……それならいいかな? )
(だろ? )
(なーんか含みがあるような気がするんだけど? )
(気のせいだって! )
ヨミが嬉しそうに断言する。
それを聞いて絶対気のせいでは無いと思う刀和。
『ど、どうするの!? 』
同様に困惑しているトヨタマはアカシに尋ねる。
アカシの方はと言えば辺りを見渡し、恥ずかしそうに諦めたような顔になり、着流しを脱いだ。
『いいわ』
『よし! 合体! 』
ヨミはそう言って着流しの前を開いた!
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