第46話 邂逅
一方で刀和の方でもとんでもないことが起きていた。
「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!! 」」」
刀和を押さえていた男たちが全員後ずさる。
押さえていた力が無くなったことで呆然と立ち上がる刀和。
(なにが……)
一瞬何が起こったのかわからなかったが、すぐにその意味がわかった。
ズシン……
静かで重い足音を立てて、黒い肌に黄色の着流しを着た白髪白髭の老晶霊が自分の前に立ったのだ。
「……だれ? 」
刀和が見上げると晶霊の険しい顔が見えた。
彫が深いというよりは皺が深い、髪と髭は真っ白で綺麗だった。
鍛え上げられた身体は一切の贅肉はなく、黄色い着流しを付けている。
そしてなによりも……左腕が無く、黒い大剣を背負っていた。
「黄衣の剣士ヨミ……」
たびたび聞く最強の剣士の名をつぶやく刀和。
それを聞いて相手の晶霊がふっと笑う。
『勝手に周りがそう言ってるだけだ。俺はただのヨミだ』
そう言ってニカっと笑う。
嬉しそうな……面白がっていそうな……それでいて無邪気な笑顔だった。
それを見て刀和はすぐに土下座する。
「お願いです! 助けてください! 」
周りがシーンと静まる。
あまりの事に周りに居た男たちも何も言えずにその様子を見守っている。
「女の子を助けたいんです! だから…………助けてください! 」
必死になって懇願する刀和。
その様子を優しげな眼で見るヨミ。
『助けてって言われてもなぁ……別に何の縁もゆかりもない相手のために命賭けろと言われても…………』
「僕の命を上げます! だから助けてください! 」
必死にお願いする刀和はしまいには足元にしがみつく。
「お願いです……助けてください……」
必死で……
足元にしがみついて……
恥ずかしげもなく……
ひたすら、好きな女の子のために……
刀和は懇願した……
『・・・・・・・・・・・・・・・』
それを見てぽりぽりと頬をかくヨミ。
『あ~~~~~~~……命上げるってのは……俺の相棒になるって意味か? 』
「何でもやります! だから助けてください! 」
必死で泣きながらお願いする刀和。
その顔からは涙が止まらなくなる。
「好きなんです……あの子が……だから何でもするから……助けて……」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしつつそれでも足を放さない刀和。
『ふふふ……』
ヨミが笑い始める。
『はーはっはっはぁ! 』
呵々大笑するヨミ。
その様子を涙目できょとんと見る刀和。
『……いいだろう』
「あ……」
きょとんとする刀和。
だが、ヨミは悪戯っぽく笑って尋ねる。
『ただし……俺の相棒になれ。それなら助けてやる』
「あ……え……」
『できるか? 』
刀和は一瞬、何を言われたかわからなかった…………
だがすぐに理解して……涙を溜めた目をキリっと尖らせてはっきりと答えた。
「やります! 」
覚悟を決めてまっすぐヨミを見やる刀和。
それを見てふふふと笑うヨミ。
『名前は? 』
「刀和です。トワ=マンダイと言います」
『万代刀和か……宜しくな』
そう言ってヨミが黄色い着流しの前を開いた。
「あ……え……」
『入りなさい』
「あ、はい! 」
慌ててヨミのお腹に手を当てる刀和。
シリコンゴムのような手触りをしたと思ったら、
むにょん
手が少し入り込む。
「あわわわわ……」
『早く入れ』
ヨミに押されて無理やり腹に飲み込まれる刀和。
恐る恐る目を開けると視界が巨人の視界に変わっている。
(これが晶霊の視界だ……)
(凄い……)
(さて。君の恋人の瞬はどこにいるのかな? )
(こ、恋人じゃないです。恋人だったらいいなぁと思ってますけど)
(そういうのいいから! どっちだ! )
(あ、あっちで戦ってます! )
(そうか……では行くぞ。アウルを使うぞ! )
バシュ!
アウルを噴射してバーニヤのように吹かして空を飛ぶヨミ。
(凄い……)
まるでジェット機のように景色が後ろへと飛んで行く。
(行くぞ! 君の恋人を助けるために! )
(だから違いますって! )
意気揚々とヨミは飛んで戦場へと向かって行った。
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