第45話 一騎打ち
ザシュッ!
アカシは後ろから忍び寄っていた晶霊の喉を刺して仕留める。
すぐにトヨタマと背中合わせになって息を整える。
『大……丈……夫? 』
『ぜん……ぜん……』
息も絶え絶えになって二人で励まし合う。
もはや、限界はとうの昔に超えており、気力だけで頑張っている状態だ。
『がははは! 活きのいいのがいるのぉ! 』
敵の集団から大きな身体の紅鮭のような頭の晶霊が現れる。
『わしは晶霊士サンケだ。手合わせして貰うぞ』
そう言ってアカシの前に出るサンケ。
すると、反対のトヨタマの方にも蟹の頭をした蟹人間のような晶霊が前に出て武器を構えて叫んだ。
『俺は晶霊士ガズエルだ。こちらも手合わせしてもらうぞ』
それを見てにやりと笑う二人。
『やるわよ! 』
『ええ! 』
アカシとトヨタマは一騎打ちを受けて立った。
トヨタマはお腹のオトと快哉を叫んだ。
(この状況での一騎打ちなんて願っても無いことだわ! )
(ああ! 絶対モノにしないと! )
普通、一騎打ちは互角の時にやるもので、勝敗が決した時にはやらない。
大将同士の一騎打ちなど、劣勢の側にとってはチャンスでしかない。
心が決まったトヨタマに対して、アカシの方は逆にもめていた。
(おかしい! あいつらなんか企んでる! )
(でも受けるしかないわ! )
戦おうとするアカシを止める瞬。
(落ち着いて! もう、包囲の薄いところを突破して逃げようよ! 幸い数も減ってきたし! )
(まだ50騎以上いるわ! そう簡単に逃げれない! )
どちらの言い分も正しい。
勝てそうにないのだから逃げるべきだし、逃げても逃げきれそうにないのは事実である。
だが、これが戦の難しいところなのだ。
都合よく正解があるわけでは無いのだ。
(行くわ! )
(止めてアカシ! 逃げて! )
瞬の制止を聞かずに突っ込むアカシ!
『でやぁぁぁぁぁぁ!!! 』
一方でトヨタマも三又の矛を持って敵将に突進する!
『はぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 』
二騎の晶霊は渾身の一撃を振るうべく、武器を振りあげた!
スカッ!
そしてアカシは両腕だけを振り下ろす。
『……え? 』
何が起きたかわからないアカシ。
だが、トヨタマは何が起きたかわかった。
『なっ! こんなっ! 』
トヨタマの槍に糸が絡まっていた。
そしてその糸の先にはギャラリーの一人の蜘蛛頭の口から伸びていた。
その蜘蛛頭の手にはアカシの太刀が握られていた。
グリュッ!
アカシの脇腹にサンケの槍が食い込む。
『あああああ!!! 』
悲痛な叫び声をあげるアカシ。
『き……さま……! 』
『あいにく俺達には正々堂々って言葉はないんでな。勝った方が正義よ』
ぎゃははははと笑う海賊達。
ドゴンッ
『ぐえふ! 』
トヨタマがガズエルの大きなハサミのパンチを受けて、頭に受けて苦悶の表情を浮けべ、そのまま崩れ落ちる。
『『ようやく終わったか!! 』』
ぎゃははははと海賊たちが笑った。
用語説明
蟹型、鮭型
この世界の晶霊は人型をしているが他の海生動物のような体つきをした晶霊が多い。
だから○○型の晶霊と出たら、その生き物が擬人化したような体つきをしていると思っていただきたい。
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