第19話 相棒


 朝ごはんが終わると次は晶霊のお世話である。


刀和達は晶霊の宿舎に向かった。


(いつもながら凄いところに住んでるなぁ……)


 晶霊は横穴を掘っただけのところで寝ていた。


 体が10M近くあるとこれぐらいになってしまうのだ。


 その一方で、体が頑丈に出来ているので、服も着流し程度しか着けていない。

 ただ、巨大さの代償として寝てるときに他の動物に体をかじられることがあるので寝床に戸は付いているが、それ以外はほとんど野宿に近い状態である。


 そんな晶霊たちは何をしているかと言えば、毎日訓練をしている。


『たぁ! 』

『はい! 』


 二人の晶霊が竹で出来た晶霊用の大きな竹刀で叩き合っている。

 もう一組はと言えば同じく竹で出来た大きな模造槍みたいなもので叩き合っている。


 こんな感じで訓練しているのも理由がある。


 実は晶霊はこの世界では『戦士』になるのだ。


 理由は単純で『人間が単体では晶霊に勝てないから』だ。

 だから晶霊はこの世界では『戦うのが仕事』になるのだ。

 人が生産して、晶霊が守るのはこの世界の常識である。

 もっとも、それ以外にも共に歩む理由があるのだが、それは後程。


 瞬はパンパンと手を叩いて気合を入れる。


「じゃあ、準備しますか」

「そうだね」


 刀和と瞬が晶霊の食事の準備に入る。


 二人が寝転がれそうなほどの大きな皿に変な草や魚を盛り付ける二人。


「いつも思うけど、よくこんなものを食べられるわねぇ……」

「なんか明らかにゴムにしか見えないんだけどなぁ……」


 ゴムのような不思議な素材で出来た謎の生き物たちだ。


 この世界には晶物と呼ばれる変な生物が居る。


 どうも人間には食べられない生き物のようで、この世界の半分はこういった生き物である。


 草はゴムのような質感で明らかに二人が知っている草ではない。

 だが、これが晶霊の食事になるのだ。


 適当に盛り付けてから晶霊の皆さんを呼ぶ二人。


「皆さんお疲れ様~。ご飯できてますよ~」

『『『『『うぃーす! 』』』』』


 6人ほどの晶霊がわらわらと集まって食事に入る。


 目の前に山のように積み上げられたのは草や果実に肉。

 雑食性でなんでも食べるのだ。


 食事も丸かじりが当たり前で料理と言う概念が無い。


 大きすぎてそこまで準備できないのだ。


 大きな皿の御飯はあっという間になくなり、全員が一息をつき始める。

 刀和はその健啖ぶりに感心する。


(結構な量食べたねぇ……)


 さすがに体が10mもあると食べる量が一味違う。


「じゃあ、片づけましょ」

「そうだね」


 そう言って二人が皿を片づけ始めたその時だった。


『ねぇシュン……』


 晶霊の一人が声を掛けてきた。


 白をベースに赤い模様をしており、所々に青い小さな斑点が付いている。

 そして目の上にアイシャドウのような青いラインが入っている女晶霊だ。


「どうしたのアカシ? 」


 女晶霊の一人でアカシという晶霊だった。

 瞬から見ても中々の腕前で、ここに住んでいる五人の晶霊の中でも特に腕が良かった。


 そんなアカシが申し訳なさそうに声を出した。


『ねえシュン。相棒になってくれないかな? 』


 それを言われて瞬はキョトンとした。



 人物紹介


 アカシ

 

  リューグ家の晶霊の中でも武術に特に優れた晶霊で周りからも高く評価されている。

  イメージは明石鯛で目の上に青いアイシャドウのようなラインがある。


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