そして…捜し物はなんですか?
さて、下半身の方を確認する訳にはいかないが…どうやら頭の傷は塞がったようだ。
目を覚ました時に下半身だけ水浸し…というのもまた異常なので、
エイナは嫌がったが魔法で服を乾かす様に言って効かせた。
俺「もともとエイナのイタズラのせいなんだからな…。
いけないことをしたら責任は自分でとるんだよ!」
エイナ「…わかったよ…。ごめんなさい…。」
…と、流石にこの流れを受け入れて、エイナは手を組み念じ始める。
その直後、ブワッと水蒸気が上がりあっという間に服が乾いた。
…のと同時に女性が目を覚まして飛び上がる!
女性「あっつぅ~い~っ!!」
起き上がった女性は腰の辺りをぱふぱふと叩きながら温度を下げようと必死のようだ。
俺「…ちなみに…精霊さん達になんてお願いしたんだよ…?」
エイナ「えと、この女の人の服だけ乾かして…だけど。
うう…気持ち悪い…。」
単純明快。
そりゃ熱で解決しようとするよな…。
目の前の、オロオロしている『わがままボディのそばかすメガネっ娘』は、
いきなりいろいろな目にあった上に何処かもわからない場所に居て、かなり混乱している。
俺「あ…あの、大丈夫ですか?」
と声を掛けると、ようやくコチラの存在に気づいたらしく…
女性「あら…あらあら…どちら様でしょうか~?」
と、キョロキョロしながらも、おっとりした口調で答える。
女性「あら~…あの…もしかして…
私、誘拐されちゃったんでしょうか~?」
何故その発想から始まる?
俺「いやいや!
あなた、洞穴を覗き込んでたでしょ?
そこを魔物に襲われてたから俺達が助けて泉に運んだんですよ!」
…嘘は言って…ない。
子供なんてある意味魔物みたいなもんだ…。
それがよ~くわかった。
おいそこのグッタリしている魔物、指の匂いを嗅いで顔をしかめるな…バカ野郎!
女性「…あ~、それはそれは…ありがとうございました~♪
そうそう…。実は捜し物をしてまして~…。」
モジモジしている所を見ると、まだ何らかのダメージが残っているようだ…。
ほんと、うちの子が…ゴメンなさい!
俺「捜し物ですか…もし良ければお手伝いしましょうか?」
ささやかな謝罪の気持ちを込めて!
女性「あら~…良いのですか~?
…実は連れが転移石を壊してしまって…一人で困っていたんですよ~…。」
俺「俺はアサヒ=ハザマと言います。
お役に立てるかわかりませんが…。」
慣れなくて緊張するが、先程のカディスさんに習って握手を求めてみる。
それに対して、快くスッと手を取ってくれたわがま…いや、メガネっ娘は…
「私は~、ユリーネル。
ユリーネル=ソーシャイハと言います。
どうぞユリィとお呼びください~♪」
と、よろけながら立ち上がり極上の笑顔を向けてくれた。
…今までの俺の周りに居ない新しいジャンルだ!
どうか俺の物語のヒロインになっていただきたい!
俺「あ、それと、そこのグッタリしてる子は、
エイナ。
…俺の…弟です。」
エイナ「…そこは妹って言っといてよアサヒ~…。
楽しみが一つ減っちゃうじゃないか~…。」
やはり楽しんでやがったか!
ユリィ「あら~可愛らしい男の子だこと♪」
と、ユリィが頭に抱きついて頬ずりするとエイナはとてもご満悦なのだが…。
やはりまだ体調が優れないらしい。
突然顔をそらしてカハッ!カハッ!と、嘔吐の仕草をみせた!
俺「おい!大丈夫かエイナ?!」
ユリィ「大丈夫!?
頭揺らして…悪い事しちゃいました~?」
苦しそうなエイナは呼吸を整えて…
エイナ「ゴメンね、大丈夫だよお姉ちゃん…。
ボク魔法が苦手でね…。
ちょっと使うとこうなっちゃうんだ…。
ボク…お姉ちゃん、やわっこくて好きだよ~…♪」
羨ましい!
ユリィ「…魔法…?何か使ったの~…?」
ヤバイ!
俺「あー!!
そう言えばドロップアイテム…
あっちに置いて来ちゃったから取りにいかないと~!」
…必死の誤魔化しを…君に!
エイナ「…ボクもうちょっと動きたくないよ…お水飲みたい~…。」
するとユリィは何の迷いもなくエイナをそっと寝かせて立ち上がり、泉の水を口に含んで戻ると、口移しでエイナにその水を与えた。
…聖母か何かか?この人は!?
ユリィ「…どう…?まだ欲しい?」
と、エイナの頭を抱えた彼女はハンカチで口元を拭き取りながら尋ねる。
少しキョトンとしているエイナはすぐに水の効用が効いていたようで、顔色も一気に良くなった。
エイナ「…はあぁぁ…♪
なんか凄く良いよ!
元気だよ!」
ユリィ「良かった~♪
私~…
いろんな効能を高める精霊さん達と相性が良いみたいなんですよ~♪」
エイナ「凄いよ!
お姉ちゃん大好きー!」
エイナはユリィにグシャグシャに抱きついてグリグリして…
ちくしょう!なんで俺は今、子供じゃないんだ!!
ユリィ「…あ、アサヒ…さん!
ちょ…あ…そろ……そろ…止めてくだ……さい~…!」
…もう少し…眺めて痛いのだが…。
仕方がない…俺はエイナのワンピースの襟首を掴んで引き剥がす。
エイナ「アサヒもやりなよ!
お姉ちゃん、気持ち良いよ♪」
無邪気にも程がある!
サイテーのセリフだぞ、それは!
俺「ダメダメ!
他人の身体には勝手に触っちゃ駄目なの!
エイナが良くても相手はわからないだろう!?
相手が男でも女でも勝手にはダメ!
それは…ちゃんと出来ないと、俺は君のお兄ちゃんをやめちゃうぞ~☆」
エイナ「えー!?それはやだよ!
お姉ちゃん、嫌だった?ゴメンなさい!」
ユリィは呼吸を整えながらも笑顔を絶やすこと無く微笑み、
ユリィ「…大丈夫よ~、エイナちゃ~ん…。
ただ…あまり激しいと…お姉ちゃん、困っちゃうから~…。」
と、そういえば時間的にもこれから何かを始めるのであれば、急がねばだ!
俺「とりあえずエイナ、さっきのアイテムを取りに行こう!
アレだけあれば目的の金額には余裕なんじゃないかな?
買い物の時間も有るんだし…。」
エイナ「あ…そうかも…。
じゃ、ちょっとボクだけで行ってくるよ。
すぐに戻るから待ってて♪」
と、言い残してエイナは泉の部屋を飛び出して行った。
ココと転送ポイントには魔物が入れないシステムのようなので、
エイナが動けるなら間違いなくそれが安全で早い選択だ。
エイナが帰ってくるまでの間に、
深くまでは伝えず…お世話になっているお姉様達に日頃の感謝を伝えたいとエイナが考えているという事。
それぞれのお姉様がどの様な人物であるのか…との簡単な說明をして、
それらを踏まえた上で女性目線で意見が貰えるなら…と、
ユリィに意見を求めてみると…
ユリィ「…そうですね~…やはり私でしたら残る物が嬉しいと思いますよ~。
その時の気持ち…素敵じゃないですか~♪
でも…特別に高価な物だと逆に…
私は…寂しくなっちゃうかも知れません…。
高価な物を与えておけばいい…
それは受け取った側が気づいた時にとても傷つく事なんですよ~…。
深く考えずに、
その瞬間に『コレをあげたい!』って思ったものが良いと思いますよ~。
…それこそ…道端で拾った小さくて綺麗なお花や石ころでも…。」
…『石ころ』というキーワードに忘れていた悪い記憶を呼び起こされはしたものの…
確かにその通りだな…と、感心した。
そして…心から思うのは、
この様なヒロインがウチのパーティに何故居ないのか!?
…ちょっとくらいのキャッキャウフフも…俺ならそれで喜びますよ!?
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