最終話.こんな私ですが、貴方と共に歩ませてもらえますか?
そして……あっという間に時は過ぎ、次の私にとって最大のイベントが待ち構えていた。それは、三学年生の卒業式である。
えっ?三学年生なら自分達の卒業式じゃないのに何か問題があるのかって?問題大アリよ!!「リリカルスクールラブ」では、この三学年生の卒業式こそが!ヒロインである私の天使!アリー・ステインローズが、攻略対象者の誰かとハッピーエンドを迎える特別な日なのよ!つまり!私にとってもう一つの重大イベントなのよ!
これまで、私はアリーに相応しい人物をじっくりと品定めしていたけれど、やはりアリーに相応しい人物はなかなかいなかった。当然よね。こんな天使のような愛らしい妹がそんじょそこらの人で釣り合う訳がないのよね。
で、そうなってくると、それなりに仕方なく相応しいと言えるのが、このゲームの攻略対象者だけど、カイン王子は告白して振られたらしいし、ヴァン王子は最近、アリーと話すよりも、私と話す事の方が多いのよね〜……。アリーを嫉妬させる作戦なのかは分からないけど、あんな愛らしい娘をムカムカさせるなんてダメね。
現宰相の息子のグラン様は、父親に引きずられ、次代の宰相になる勉強で忙しく、あまりこちらと顔を合わせる機会が減ってしまっているし、そして、義弟のケインは……
「ヤァ!アリーオ姉様!アンナオ姉様!オハヨウゴザイマス!今日モヨイ天気デスネ!」
まるでひと昔前のロボットみたいな喋り方になってるんですけど!?これなら◯ッパー君の方が流暢に喋るわよ!!?あまりに酷いから大丈夫か尋ねたら……
「ハハハハハ!大丈夫デスヨ!アンナオ姉様!百合姉妹サイコー!」
……全然大丈夫じゃなかった……お父様……一体ケインにどんな調教をしたのよ……
で、リンクスはというと……未だに武者修行の旅から戻ってきていない。まぁ、リンクスの実力ならよっぽどの事がない限り大丈夫でしょ。
という訳で、攻略対象者達は皆、アリーに三学年生の卒業式の日に告白する感じではなくなった。しかも、アリーは現在婚約解消されフリー。こんな美少女がフリーになると必然的に……
「アリー伯爵令嬢!俺は卒業と同時に魔法省に働く事が決まったんだ!俺と付き合ってくれ!」
「アリー伯爵令嬢!ずっと前から貴方の事が!俺と付き合ってください!」
「アリー伯爵令嬢!私は貴方と同じクラスで!貴方の事をずっと見てました!好きです!付き合ってください!」
「アリー様でもアンナ様でも!どっちでもいいから俺といっぱ……ぐべはあぁ!!!!?」
それはもう先輩・同学年問わず男子生徒からアタックを受けまくった。あまりに多すぎるんで、私でも半分以上ぐらいしか処理出来なかった。後、最後に現れたエロい最近侯爵になった子息は私以外の魔力弾を食らった気がするけれど……気のせいかしら?で、そんなモブ男子生徒に対するアリーの返答は……
「申し訳ありません。貴方の好意は受け取れません」
全員この返答を貰って玉砕した。当然ね。こんな天使のような愛らしい妹に、モブ男子なんて相応しくないわよね!
「ふぅ〜……私の卒業式でもないのに、もの凄く疲れてしまいました……」
アリーは軽く溜息をついて、この学園名物の大樹に背中を預けるようにもたれかかった。普段なら誰かがはしたないからやめなさいって注意するだろうけど、今は私しかいないから、咎める人はいない。まぁ、あの大量の告白の後だと疲れても仕方ないしね……
「お疲れ様。アリー」
「あっ……」
私はアリー頑張ったねという想いを込めて、アリーの頭を優しく撫でた。アリーはそれを受けて気持ち良さそうに目を細めていたけれど
「お姉様……こんな私ですが、貴方と共に歩ませてもらえますか?」
突然、真剣な表情で私にそう聞いた。ん?このセリフ……どこかで……あっ!そうだ!これ!アリーが攻略対象者の告白受けて、そう問い返すあのセリフじゃん!?って……何でそのセリフを私が言われてるんだろうか……?まぁ、いいか。答えなんて決まってるし。
「当然よ!私はこれからも貴方の姉よ!だから、貴方が誰かと幸せになれるようにちゃんと導いてあげるからね!」
と、返した。うん!それが私の役目だしね!
けど、私の答えを受けたアリーはポカンとした表情を浮かべ、すぐにジト目で睨み
「そういう意味で言った訳じゃないんですが……」
ん?あれ?もしかしなくても私……なんか言葉を間違えた?が、アリーはすぐに呆れたような溜息をつき
「まぁ、最初から長期戦は覚悟の上ですからね……」
アリーはそんな事を呟くと、私の手をとり、いつもの愛らしい天使スマイルを見せ
「お姉様!今日は午後の授業はありませんし!王都に出来た「パルフェリア2号店」に行きましょう!」
そう言って、私を引っ張るように歩き出すアリー。
「ちょっ!?アリー!そんなに慌てなくても!「パルフェリア2号店」は逃げないわよ!?」
「お店は逃げなくても、目的のケーキは無くなっちゃいますよ!」
「そりゃあそうかもしれないけど!?」
まぁ、ぶっちゃけ私が来る用に、新作ケーキの一つや二つは用意されてるとは思うんだけどね……
私達姉妹は、これからもこうやって手と手を繋いで歩み続けていく
終
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