閑話.エリザベス元公爵令嬢の旅立ちを阻む者

エリザベス元公爵令嬢を乗せた馬車は、国境付近で停車した。


「お送りしていただきありがとうございます。後は報告の為にお戻りくださいませ」


エリザベスは自分を送ってくれた魔法省にお辞儀を馬車から降りた。


「あの……やはり……せめて近くの村ぐらいまでは……」


エリザベスを見送るように命令を受けた職員の1人がそう言ったが、エリザベスは首を横に振る。


「ダメです。私は罪人なんです。そこまで甘える訳にはいきませんよ。では」


エリザベスはそう言うと、後ろを振り返る事もせずに歩き出した。自分の未来に向かってまっすぐに……魔法省の職員はそれを黙って見送り……後ろ髪を引かれる想いを抱えて魔法省に報告に戻った。




が、そんなエリザベスの旅立ちを憎々しげに見つめる視線があった。


「エリザベス……!使えない娘が……!ワシから家を奪って良い旅路が出来ると思うなよ……!」


その正体はエリザベスの父だった。エリザベスの父は残していた金で雇った傭兵団に、娘を殺すように命令した。が……


「やっぱりね……エリザベスちゃんの話を聞いておかしいなとは思っていたけど、災厄に憑かれていたのはエリザベスちゃんの父も同様だった訳ね……」


「なっ……!?お前は……!!?」


エリザベスの父の前に現れたのはヴィオル・アスカルドだった。ヴィオルは炎で傭兵団を全て吹っ飛ばすと、キッとエリザベスの父を睨みつける。そして……


ゴチンッ!!!!


「ッ!!?かはぁ……!!?」


カイン王子達と同じ要領でエリザベスの父を殴り、エリザベスの父に憑いていた災厄を払った。


本来、こんな事は普通の魔法が優秀な人でも出来ないのだが、アイリーンがかつて、次世代にもセシリアの力を残せるように願った。その願いが、今世ではヴィオルに宿っていた。だから、ヴィオルは実はセシリアと同じ巫女の力で災厄を払っていた訳だが、本人は全くその事に気づいていなかった。ただ、せっかく可愛い娘が頑張って旅立つというのを邪魔する愚か者を殴っただけに過ぎなかった。


「エリザベスちゃん。私も、貴方の旅に幸多い事を祈ってるわ」


ヴィオルはエリザベスが向かった先を見つめながら、微笑みを浮かべていた。

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