132.エリザベス元公爵令嬢の望み

エリザベスさんの話を聞いて、ヴィオル様は腕を組んで何か考え始めた。


「そんな……すぐに捨てる判断をする公爵が何故……?」


ヴィオル様は何かを呟いていたけど、私の耳にそれは届かなかった。


「あの……エリザベスさん……やっぱり国外追放は重すぎると思うんです。もう貴族じゃなくなっただけでも十分過ぎる罰だと思うのに……」


私はそう言うと、エリザベスさんは苦笑を浮かべて首を横に振った。


「覚えていないし、操られていたかもしれないとはいえ、貴方を殺しかけ、アリー様を傷つけた事には変わりないわ……だから……この罰は受けるべき罰よ……」


エリザベスさんはそう言った。もう彼女はこの罰を受け入れてしまっている。これは、私がいくら言葉を並べても止めることが出来ないだろう……


「それにね……少しだけ……楽しみでもあるの。ずっと幼い頃から王妃教育で、公爵家や王城しか行った事なくて、本でしか見た事のない世界の景色を見られるのが……ちょっと不謹慎かもしれないけど……」


エリザベスさんは笑顔を浮かべてそう答えた。その笑顔は心の底から楽しみにしてるというのが伝わって……そうか……これが、彼女の本当の望みなんだという事が分かり、私はもうとやかく言うのをやめた。


「もう二度と会えないかもしれないけど……それでも、貴方の旅の無事を心から祈っています」


私はそう言ってエリザベスさんに手を差し出した。それにエリザベスさんも驚いていたけれど、すぐに笑みを浮かべ、私の手を受け取り


「ありがとう。私も、貴方の今後が幸多き事を祈っているわ」


こうして、悪役令嬢になるはずだった私と、悪役令嬢にされてしまったエリザベスさん。そんな2人が和解して握手を交わす事ができた。


そして、この数日後、エリザベスさん国外追放処分となり、馬車に揺られ国境付近まで送られて行ったらしい。見送りは十分に済ませたから、私はあえて見送りはしなかった。



この後、エリザベスさんはエリスと名を改め、「雷鳴剣」という二つ名で呼ばれる程有名な冒険者になるのだけれど、それは更に数年後の話だ……

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