130.エリザベス元公爵令嬢

私は馬車に揺られる事数分、魔法省に到着した。


「初めて見たけど……結構立派な建物ねぇ〜……」


「一応王家の次に発言力がある所ですからね〜」


私の呟きにすかさず解説を入れるキョウカ。サクラは馬車を邪魔にならない場所に置いておくように命じている。もちろんメルルには言っていない。帰りの馬車が無くなりそうだし……。


「さてと……ヴィオル様に会うにはどうしたらいいのかしら?やっぱり受付で聞いてくるのが一番かしら?」


「あっ!だったら私が!」


「キョウカ。受付で聞いてきてもらえる?」


「は〜い。かしまこまりましたぁ〜」


「ちょっ!?お嬢様!?受付で聞くぐらい私でもやれますよ!!?」


うん。出来るとは思うんだけど……やっぱり色々不安なのよ……メルルに任せるのわ……

しかし、キョウカに任せる必要もなかった。上空から1人の女性が私達のもとに降り立った。その人が……


「は〜い!アンナちゃん!ごめんなさいね!待たせちゃったみたいね!」


ヴィオル・アスカルド公爵令嬢だった。いや、何でヴィオル様文字通り飛んで来たの?私の疑問を察したのか


「ごめんなさいね〜!本当に!ちょっと急な仕事が入っちゃって!」


と、答えてくれた。あぁ、なるほどね。流石は魔法省のトップエース。忙しいみたいね〜。


「それで……彼女に会いたいのよね?」


「はい。大丈夫なら会いたいです」


「もう彼女には災厄は取り憑いていないし、彼女も最後に会いたいって言ってるから問題ないわ。案内するわ」


こうして、私はヴィオル様に案内されるまま魔法省に入る。魔法省の施設をチラチラと見てみたが、なんか魔法の研究施設みたいな所もあれば、沢山の本を管理する場所があったり、沢山の書類を整理したりと……なんだか色々な種類の施設がごちゃ混ぜにあるような感じだった。


「ここよ。さぁ、入って」


ヴィオル様に案内され、たどり着いたのは簡素な真っ白な扉。私は扉をノックし扉に手をかける。


「失礼します」


私が部屋に入ると、また更に簡素な部屋がそこにはあった。前世の輪の部屋と同じぐらいの間取りに、ベッドと机と椅子だけが置いてあった。そして、そのベッドには1人の女性が腰掛けていた。


「はじめまして……いえ、貴方にとってはお久しぶりなのかしら?アンナ様」


「どちらでも……貴方は……エリザベス様でいいんでしょうか……?」


「様は不要です。もう、私は公爵令嬢ではないんですから……」


私はこの部屋で再びエリザベス元公爵令嬢に再会した。が、彼女は私の知っているエリザベス様とは違っていた。

今のエリザベス様は、長かった髪を肩ぐらいの長さまでになっており、髪の色も金色から茶色に変わっていたのだった……

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