110.悪役令嬢アンナ・ステインローズは本当に誰からも愛されてなかったのか?

今、私は真っ暗な空間をひたすら歩いて進んでいる。その歩みの先に彼女がいるのを確信して……


そういえば……ここは私の中みたいな世界だけど、私は未だにアンナ・ステインローズの姿のままだ。一応、私には桐島 杏奈である自覚もあるけど、今の私はやっぱりアンナ・ステインローズなんだなと思い、思わず笑みを浮かべる私。


そうやって歩みを続けていくうちに、私はようやく目的の人物に出会う


「憎い……!憎い……!憎い……!私から全て奪うあの娘が憎い……!?」


ソレに囚われ未だにアリーへの憎しみの声をあげる悪役令嬢アンナ・ステインローズである、「私」がそこにいた。


「……どうしてそこまでアリーを憎むの?」


つい、私は「私」にそう尋ねると、「私」は私の方を振り向き


「どうして……?貴方なら分かるでしょう……!貴方は「私」なんだから……!?」


と、憎々しげにそう言った。確かに私になら分かる。


記憶は身体にも刻まれるとそんな風に言った人もいるけど、それは本当なんだなと、アンナ・ステインローズに転生さて実感した。

アンナ・ステインローズの肉体で転生した結果、私にはアンナ・ステインローズの様々な記憶を客観的に見る事が出来ていた。これまでよく頭に浮かんできたあれこれも、アンナ・ステインローズの身体に刻まれた記憶の数々だったんだろう。まぁ、それが出来るようになったのが自分が何故転生したかを思い出した時だったので、もっと早く思い出せてたらなと思わなくもないが……


そして、そんな彼女の記憶だが……常に周りの人間に、妹のアリーと比べられる日々だった。魔法の力の差だけでなく、勉学もどれだけ努力してもアリーには勝てず、貴族令嬢らしい振る舞いをしても、見目麗しい天使のようだと毎回絶賛されるのはアリーばかり。おまけに、婚約者であるヴァン王子はアリーに夢中。お父様やお母様も最初こそは色々慰めてくれていたけれど、アリーが色んな人に絶賛される内に、アリーばかりを優先して可愛がるようになって……


まぁ、こんな風に誰からも認めてもらえなくなったアンナ・ステインローズはやがて自分の妹を逆恨みするようになっても仕方ないかもしれない。そして、その気持ちをソレに利用され、更にソレはアリーの想いと力までをも利用して何度も彼女に同じ屈辱と劣等感に満ちた日々を過ごさせ、彼女の憎悪を膨らませていったのだ。


「貴方は誰にも認めてもらえていない。愛されていない。その理由がアリーにあるからアリーを憎んでるのよね」


「えぇ!!そうよ!!あの娘さえいなかったら!私は!?」


「本当に?本当に貴方は誰からも愛されてなかったの?誰にも認めてもらえなかったの?」


「なっ……!?何を言って……!?そんな事は貴方が1番よく知って……!」


「えぇ、知ってるわ。よく知ってるからこそ……もう一度貴方に問うわ。貴方は本当に愛されてなかったの?貴方は本当に認めてもらえなかったの?」


私が「私」にそう問いかけた時、真っ暗な空間はとある光景を映し出す。それは、「私」がアリーにナイフを突き刺した時……


「ぐっ……!?ごほっ……!?ごめんなさい……お姉様……」


ナイフで刺されたのに、何故がそう謝るアリーに戸惑う「私」


「私のせい……ですよね……お姉様は必死て……一生懸命に……いつも頑張って……なのに……私が姉妹として……近くにいたせいで……お姉様は……本当に……ごめんなさい……!」


涙を浮かべながら「私」に謝罪するアリー。そして、アリーは微笑みを浮かべると……


「けど……私は……やっぱり……お姉様の妹に産まれてきて……良かった……!私は……一生懸命で……頑張り屋な……お姉様を……尊敬……してます……!大好きです……!お姉様……!」











「あぁ……!?あぁ……!!?いやあぁぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーーーー!!!!?」


再び真っ暗な空間に戻り、「私」の絶叫がその空間全体に響き渡った……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます