97.不穏な新学期のスタート

なんだかんだあった夏休みが終わり、ついに「リリカルスクール」は新学期に入る。


そして、それは「私」の終わりの始まりでもある。



あぁ……多分校門に入るのをこんなに憂鬱に感じてるのはきっと私だけよね……普通の人は自分の未来を知ってる訳じゃあるまいし……まぁ、でも……いつまでもウジウジ悩んで進まないのも私らしくないわね!しっかりしろ!私!

私は自分自身に気合を込めて、足を進めようとしたのだが……


「………………」


「アリー……?」


呆然と校門を眺めていたのは私だけじゃなかった。アリーも何故か不安そうにジッと校門と私を見つめていた。


「お姉様……私がもし学校に入りたくないって言ったら……お姉様は私を叱りますか?」


「アリー……」


アリーは酷く怯えた様子で私にそう言った。その肩は……震えていた。


「分からないけど……怖いんです……私……今……この門に入ったら……お姉様とは永遠に会えなくなる気がして……凄く……怖い……」


アリーはそう呟くようにそう言った。その言葉の一つ一つに恐怖の感情があるのがひしひしと伝わってきた。


ふぅ〜……やれやれ……私ってば姉失格かもね。こんなに怯えてる妹に気づいてやれないなんてね……

私はアリーの肩をポンと叩くと、いつものようにアリーに微笑みかけた。


「大丈夫よ!アリー!いつも言ってるでしょ!貴方は私が必ず守るからって!守る為には絶対に貴方の傍から離れたりしないから!ね?」


私はアリーを安心させるようにそう言った。まだアリーの肩の震えはおさまってはいないけれど、それでもアリーはいつもの天使の癒しスマイルを私に向けて


「はい!ありがとうございます!お姉様!でしたら、私はお姉様を守る為に頑張りますね!」


と言ってくれた。本当にうちの妹ってばなんて優しくて可愛いのかしら!本当に天使ね!天使!あぁ〜……やっぱり学校行かず、妹と2人でお出かけしようかしら……って、自分で自分に気合入れたばっかりでそれはダメですよね。はい。

若干、後ろ髪を引かれる気持ちを味わいながらも、私は妹と一緒に「リリカルスクール」の校門をくぐった。


しかし、私の物語は着実に破滅への道を進んでいた……



今更だけれど、私とアリーは同じ教室で勉学を共にしている。コレは正に神が私に与えてくれた幸運!ではなく、一応コレもゲームのシナリオ通りなのよねぇ〜……まぁ、それでも勉強をするアリーの姿が見られるのはゲームでは見られないから凄い役得だけどね。

そして、私達は教室に入りそれぞれの用意された席に着こうとしたその時……


「えっ……!?」


アリーのそんな声が聞こえ、私はすぐにアリーの所まで駆け寄ると……


「なっ……!?何コレ……!!?」


私達が目にしたのは、ナイフか何かで、傷を何ヶ所もつけられたアリーの机だった。思わず私は驚いてそんな言葉を上げたけれど、コレを私は知っている……コレは……ゲームの「私」がアリーへの嫉妬心をついに抑えきれずにやったそれだ。

けど何故だ?私がやってないのはもちろんだけど、コレを起こしたのは新学期始まってから数日後のはずだ。この展開は早すぎる……


「そんな……どうして……まだ……」


アリーは先程校門前にいたよりも酷く怯えた様子で自分の机を眺める。って、そりゃあこんな事があったら怯えるに決まってるわよね。

私はアリーを励まそうとアリーの肩に触れようとしたが……


「アリー嬢に触れないでいただけますか。アンナ・ステインローズ伯爵令嬢」


突然冷ややか声でそう言われ、私は声のした方を振り向く。

そこには、冷ややかな眼差しで私を見るカイン王子、グラン様、ケイン、リンクスの4人の攻略対象者の姿があった。

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