閑話.問題ってのは次から次へとやってくるものだ

やはりというか、何というか、バルカス皇子がひと騒動起こした問題もようやく決着がつき、思わず謁見の間の椅子ドカッと深く腰掛けて溜息をつくアスラン陛下。そんな夫を見てリアンナ王妃は苦笑を浮かべた。


「陛下。ダメですよ。気持ちは分からなくはないですが、ここはまだ謁見の間なんですから、誰かに見られたらマズイですよ」


リアンナ王妃に指摘され、アスラン陛下も苦笑を浮かべてリアンナ王妃を見る。


「ちゃんと人払いはしてある。今日は謁見にやって来る者もいないし、今は2人っきりの時のように呼んでもらえると嬉しいよ。リア」


「分かりました。アスラン様」


リアンナ王妃は苦笑しながらもアスラン陛下に応えた。


「相変わらず仲がよろしいようで大変喜ばしいですね。アスラン陛下。リアンナ王妃」


突如、そんな声がして2人は声がした方を振り向くと


「ヴィオラ……いや、ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢……其方一応今は侯爵令嬢になってるならちゃんと謁見の間の扉から入場してくれないか?」


そこに居たのはヴィオラルド王女改めて、ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢だった。今この場に3人しかいないので、どっちの名で呼んでも問題ないのだが、今はヴィオル・アスカルドになっているので、そっちで呼ぶべきだと判断してアスラン陛下はそう呼んでいた。


「申し訳ありません。陛下。しかしながら、陛下にまだ問題が片付いてない事を忠言しようかと思いまして」


「なんだと……?」


彼女がそう言ってきたという事は、本当にまだ厄介な問題が片付いてないのかもしれない。正直また胃が重くなるアスラン陛下だが、ヴィオルはそんな事はお構いなしに


「小さい問題と大きい問題。どっちから先に聞きますか?」


もの凄い笑顔でそう聞いてくるヴィオルに、思わず殴りたい衝動に駆られるが、アスラン陛下は必死に堪え


「とりあえず、まずは小さい方から頼む」


「かしこまりました」


ヴィオルは恭しく淑女の礼をし


「これは、先程ヴィオラルド王女から伺ったのですが、あのリチャード皇太子の目、確実にアンナ・ステインローズ伯爵令嬢に惚れてるわね。だそうです」


「なっ!?何ッ!!?」


「あっ、それは私も思ったわ」


「なっ!?リア!?お前もか!!?」


アスラン陛下は驚いて立ち上がり、ヴィオルとリアンナ王妃を交互に見る。そんなアスラン陛下を見た2人は呆れたようなジト目でアスラン陛下を見ていた。


「陛下……無礼を承知で言いますが、鈍すぎではないですか?」


「この人って、王眼って言う特殊な魔法を持ってるから国王陛下に選ばれたはずなのに、何故恋路関係は見抜く力を持ってないのよね〜……おかげで私がどれだけ苦労して、しかも、アルフ様まで頼って王妃になった事か……」


「うぐっ……!?」


2人に責められアスラン陛下は思わず言葉に詰まる。アスラン陛下の持つ「王眼」は代々ウィンドガルの王族が稀に得られる魔法。国のあらゆる全てを見抜くという凄い魔法である。

しかし、凄い魔法とは言え、あまりに強力な魔法な為に、得られる者は稀であり、得られたとしても完璧に見抜ける程使いこなせる人物はいない。アスラン陛下も、大きな変化を稀に感じられるとかその程度なのだ。例えば、ある令嬢が無属性の魔法を龍に使用したとか……。無理に使おうとしても発狂して廃人になる為、使用には慎重にならざるを得ない。


「まぁ、先程言った通り。これは小さな問題ですわ。ですが、場合によっては大きな問題でしょう。リチャード皇太子はバカ……バルカス皇子のように問題を起こす方ではありませんが、有能な方の上に顔もいいですから、もしも、本当にアンナ・ステインローズ伯爵令嬢を口説き落としてしまったら……」


「そ……!?それは困る……!!?」


アスラン陛下はアンナの力の一端を「王眼」で知ってる為、アンナが他国へ渡るのだけは避けたい。だからこそのヴァン王子との婚約なのだが……


「正直、ヴァン王子との婚約でアンナちゃ……アンナ・ステインローズ伯爵令嬢を縛るのは失敗だと思いますよ。ヴァン王子はどう考えてもアリーちゃ……アリー・ステインローズ伯爵令嬢に惚れてますし……」


「なっ!?そうなのか!!?」


いや、息子の恋路すら気づかないのかよ……と言いたげな視線でヴィオルとリアンナ王妃はアスラン陛下を睨み、アスラン陛下は思わず椅子に座りへこたれてしまう。


「やっぱり、無理に婚約を結ぶのはマズかったかしらね〜……」


「しかし……婚約を2人とも了承したとアルフが言っていたぞ……」


「苦虫潰したような顔で……ね……」


2人はその時の事を思い出してブルリと身震いした。


「まぁ、あの2人の真意は分かりませんが、あの2人の事は私に任せてもらえませんか?」


とてつもなくいい笑顔で言うヴィオルに、あまり頼みたくない気持ちになるアスラン陛下だが、だからといって自分にコレといった策がないので……


「分かった。ステインローズ伯爵令嬢達の事は、ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢に任せる」


「はい。承りました。陛下」


そう言って淑女の礼をした後、「よし!」と言ってガッツポーズするヴィオルを見て、やっぱり頼む相手を間違えたかなと遠い目になるアスラン陛下だったが、一度王として頼んだ事を取り消す訳にもいかず、溜息をついた後、とにかく次の話題にいく事にした。


「それで、大きな問題というのは?」


「あっ、そうでしたね。うっかり忘れてました」


「自分で大きな問題と言ったやつを忘れるなぁ!!?」


ここに誰もいないのをいいことに思わず叫んでしまうアスラン陛下。すぐに自分の失態に気づいてコホンと咳払いをし、ちゃんと椅子に座り直す。アスラン陛下が落ち着いたのを察しヴィオルは話し始めた。


「これは、エルフ族の英雄のエルサ様からの伝言ですが、かつて、ウィンドガル王国の初代国王アイリーン様の双子の妹、セシリア様がその命をかけて消滅させた災厄が復活したかもしれないそうです。この国で」


「はあぁぁぁ!!?」


結局再び素っ頓狂な叫びを上げ立ち上がってしまうアスラン陛下。


どうやら、このウィンドガル王国の抱える問題はまだ終わらないらしい……

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