95.私にはまだ会わなくてないけない人がいる
さて、バカがいなくなり、ようやく静かになったところでアスラン陛下が口を開く。
「それで……我が国は貴方達の国の友好国として合格かな?リチャード皇太子」
アスラン陛下にそう言われ、リチャード皇太子驚いて目を見開くも、すぐに微笑を浮かべ、何故かチラリと私を見た。えっ?何?その意味ありげな視線は?
「えぇ、この国を攻め落とすのは大変困難だという事が今回の一件でよく分かりました。父に代わり、今後もウィンドガル王国と友好関係を続けていく事を、この皇家の紋章に誓いましょう」
リチャード皇太子はそう宣言した。皇族が皇家の紋章に誓いをたてるのは絶対的な約束で、破った場合は即死刑になるらしい。つまり、次期皇帝陛下はウィンドガル王国と絶対的な友好関係を築くと宣言したようなものだ。
そして、リチャード皇太子は……何故か真っ直ぐに私に近づいて行く。えっ?何?私何か気に触るような事しました!?が、私の心配をよそに、リチャード皇太子は深く私に頭を下げた。
「此度の件。貴方には大変ご迷惑をおかしました。アンナ・ステインローズ伯爵令嬢。最早弟ではなくなったとは言え、愚弟の不始末を謝罪いたします」
あぁ……リチャード皇太子は謝罪がしたくて私をチラチラ見ていたのね……けど……
「あの……リチャード皇太子。失礼ですが謝罪する相手を間違ってませんか?」
私はそう言うと、リチャード皇太子は再び微笑を浮かべ
「これはごもっともです。アリー・ステインローズ伯爵令嬢。愚弟が貴方様に不埒な行いをし、誠に申し訳ありませんでした」
すぐに、アリーの方を振り向いて、アリーに深く頭を下げて謝罪した。うん。順番を間違えたとは言え、あのバカとは違い、本当に素晴らしいお方だ。あのバカの兄とは思えないなぁ〜……
そして、アリーから「貴方が悪い訳じゃないですから……」と許しの言葉をもらい、リチャード皇太子は顔を上げ、にこやかに笑いながら私に近づき……
「龍達を従え、弟を撃退した貴方はとても美しかった」
「んなぁ……!?」
私の耳元でそうはっきりと言ったのだ。なっ!?全部見られてたの!?いや、バカを見張っていたんだからその可能性はあったんだけど……
「では、私はこれにて。また会えるのを願ってますよ。アンナ・ステインローズ伯爵令嬢」
リチャード皇太子は微笑みを浮かべながら、謁見の間を退室して行った。私はその姿を呆然と見送るしか出来なかった。妹が殺意を込めてリチャード皇太子を睨んでいた気がするが、それすら気にならない程、私の頭の中は酷く混乱していた……
うん。とにかく今は気持ちを切り替えよう。切り替えが早いのが私のいいところだよね。リチャード皇太子は特に何も言わなかったし、他国の人なんだし、特に問題ない……はず……
って!?ダメよ!?私!今からラスボスのような人に会いに行く訳なんだから……私は扉の前に立ち軽くノックをする。
『どうぞ。お入りになってくださいな』
部屋の中から、この部屋に泊まってる主の声が聞こえてきた。私は許可を得たので扉を開ける。そして、その部屋にいたのは……
「こうして直接会って会話するのは初めてかしら?アンナ・ステインローズ伯爵様。いつかは直接話し合いたいと思っていたのよ」
「私もです。エリザベス・マグダエル公爵様」
これまでなんとなく嫌な感じがして、直接会って話すのを避けていたけれど、アリーが攫われた事でようやく私も決心したわ。
彼女と直接会って話す事に
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