閑話.ライアットとエルサ

ライアットは痛む箇所は摩りながらパーティー会場へと戻って来た。先程、ようやくなんとかバーサーカーと化したアルフを部屋に閉じ込めてきたところである。


「おぉ〜……痛てぇ〜……あの野郎……手加減なく殴りやがって……」


「ご愁傷様。ライアット」


ライアットにそう言って駆け寄ってきたのは、エルフ族を代表してやって来た英雄エルサだ。エルサは持っていたワインをライアットに渡す。ライアットはそれを素直に受け取り、ジト目でエルサを睨んだ。


「ったく……お前も見てたんなら手伝えっての……」


「嫌です。あの状態の彼を相手にするぐらいなら、興奮状態のオーガの群れに突っ込んでいた方が楽です」


「本当にそれだから溜息しか出ないな……」


ライアットは深い溜息をつき、貰ったワインをグッと一息で煽るように飲んだ。


「しかし、やっぱりあのバカ皇子は問題起こしやがったな……」


「まぁ、彼はある意味で有名人ですからね。もちろん悪い意味で」


話題変更と言わんばかりにライアットがそう切り出したら、エルサもその話題に乗り軽く溜息をついた。


「しかし、帝国の皇帝はさっさとあのバカ息子を切るべきだろ」


「貴方には分からないかもしれませんが、それが人の家族の情の深さというものですよ」


「そういうもんかねぇ〜……俺には分かんねぇや……」


ライアットは軽く溜息をついてそう言った。

ライアットをはじめとする獣人族は、情愛がない訳ではないが、一度問題を起こしたり、犯罪を犯した者には厳しい。それが例え家族であってもだ。だからこその発言である。


「まぁ、あそこの皇帝陛下も大変厳しい方ではありますから……これはもしかすると彼に与えた最後のチャンスなのかもしれません」


「最後のチャンス?」


「要は、このパーティーをきちんと皇族らしく振る舞えたら息子としてちゃんと扱うという事でしょう」


「だったら、もうアウトじゃねえか」


ライアットは呆れたように溜息をついてそう言ったが、エルサは首を横に振った。


「いいえ。まだこの程度の問題なら、皇室に軟禁状態だけで済ませる程度でしょう。本格的に縁切りをするつもりなら、もっと大きな問題を起こしたらでしょう」


「おいおい……もっと大きな問題起こしたら下手したら戦争になるぞ……」


「別に。それだけの問題起こしたらバカ皇子を生贄に差し出すだけですし、むしろ、バカ皇子が起こす問題ぐらい片付けられないようなら、あの皇帝陛下ですから、本当にウィンドガル王国を自分の国にしてしまおうと考えてるでしょう」


「アイツなら本当に考えてそうだな……」


グランズール帝国の皇帝陛下の事をよく知ってるライアットは軽く溜息をついてそう言った。


「まぁ、でも大丈夫でしょう。彼女がいますし」


エルサはそう言って、頰を膨らまし、あからさまに怒りをあらわにしているアンナを見てそう言った。


「かつての私の仲間であるアイリーンと同じ力を持つ彼女なら、この程度の問題は簡単に解決するでしょう」


エルサはアンナを見つめなが微笑みを浮かべてそう言った。


エルサの目には、自分と同じく五大英雄と言われたアイリーンとアンナが重なって見えていた……

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