86.嫌な予感ってのは大概当たる

そして、ついにウィンドガル王国建国祭当日……私は(契約)婚約者であるヴァン王子にエスコートされ、王家の特別席へと向かう。私、悪役令嬢なのにこんなイケメン王子にエスコートされてこの席に座るの場違い過ぎないかしら?


そして、更にカイン王子にエスコートされてやって来るのはもちろん!我らが最強可愛いヒロインのアリー!!もう!今日もめっちゃ新しく仕立ててもらったドレスが眩しいわ〜!本当……ドレスに着られてるような私とは大違いよね〜……


「その……今日は随分と綺麗だぞ……」


と、婚約者であるヴァン王子に私の姿を見せたら、赤い顔してそっぽを向かれたし……よっぽど酷すぎて笑いを堪えるのが大変だったんでしょうね〜……。


そして、アスラン陛下の開会宣言により、ウィンドガル王国建国祭が開催され、私達の席に、有力貴族や他国の貴賓の方々が続々と挨拶に見えた。私は必死の0円スマイルで対応する。私の顔って悪役顔だから、笑みを浮かべると余計に悪役っぽいから、他の方々へ不興を買ってないか心配だわ……


そんな中、一際目立つ男性が現れた。とにかく大柄で、服越しからもその逞しい筋肉が目立っている。が、1番特徴的なのは、まるで獅子の立髪のような髪の毛に、更によく見ると……ライオンみたいな尻尾がある?その男性はニッと笑うと、私とアリーの前に跪き


「お嬢さん方。俺は獣王国の獣王ライアットって言う。お嬢さん方、俺の嫁にならないか?」


と、言ってきた。えっ?ちょっ!?アリーだけじゃなく……私にも言った!?この人!?ってか、この人今確かに獣王国の獣王って……


「ほう……ライアット……俺の娘にちょっかいをかけるとは猫風情がいい度胸だな……!」


すると、そのライアット様の背後から恐ろしいオーラを放つお父様が現れた。


「げっ!?アルフ!?って!?娘!?じゃあこれが噂の……って!?あただだだだだぁぁ〜!!?止めろ!?その関節はそっちには曲がらねえよ!!?」


あの……うちのお父様がひとまわりも身長差がある人に関節技をきめてるんですが……というより誰か止めた方が……


「やれやれ……だからあれ程今日のパーティーに出席する貴賓の人物の名前ぐらいはちゃんと覚えなさいって言ったでしょ」


そう言って軽く溜息をついてやって来たのは……超美人なエルフのお姉さん!!?って言うか……このゲームにそんなファンタジー要素のあるキャラクターいたかしら?って龍がいるんだし、今更なのか……


「お久しぶりです。アスラン陛下。本日はエルフ族を代表しましてウィンドガル王国建国のパーティーにエルサ参上しました」


エルサさんは貴族令嬢にも負けない優雅な礼をし、私達に挨拶した。私も慌てて礼を返す。


「ハイエルフのエルサ。エルフ族きっての英雄ですね」


私の背後に控えていたキョウカがそう説明してくれる。エルフ族きっての英雄……それはちょっと気になるわね……後で調べておきましょ。


「って!?ちょっ!?エルサ!!?アルフを止めろ!!?いや!止めてください!!?」


若干涙目になりながらそう訴えるライアット様に、エルサさんは呆れた溜息をつく。


「あなたが悪いんじゃないですか。もうすでに28人の妻がいるのに、気に入った女性を見かけると見境なく声をかけるから……」


28人の妻って……後に聞いたら、獣王国、主に獣人が暮らすこの国では一夫多妻制が当たり前らしい。だから、その国の王である獣王にはそれぐらい妻がいても不思議ではないらしい。なんとも凄い話だ……


「って言っても!俺のはお決まりの挨拶みてぇなもんだろ!?だからいい加減離せ!!?アルフ!!」


ライアット様が流石にかわいそうに見えてきたので、私はお父様とライアット様に声をかける。


「お父様。どうかそのぐらいで。それと、ライアット様。私とアリーはあなたのお嫁さんにはなれません」


私がそう言うので、ようやくお父様はライアット様を解放した。ライアット様はあちこち凄く痛そうに撫でながら、私に手を挙げて礼を述べる。


「よう。お嬢さん。助かったぜ。ありがとな」


「というか、ライアット。貴方は人の物に手を出す主義じゃなかったでしょ。あの2人はアスラン陛下の息子2人の婚約者なのよ。貴方の鼻はそういう匂いも分かるんじゃなかったの?」


「いやぁ〜……だって、その2人からその男達に恋する匂いってのを感じなくてよぉ〜……だから、てっきりアスランの娘かと思って……それがまさかアルフの娘だったとは……」


ライアット様は頭をポリポリと頭をかきながらそう言った。その言葉に思わず私はドキリとしてしまう。私とヴァン王子は契約婚約で、そこにお互い愛情のカケラもないものね〜……匂いはともかく、かなり鋭い鼻なのは間違いないわね……


「あっ、でもそっちのお嬢ちゃんは誰かに恋してる匂いはするな」


「えっ!?」


アリーを指差してそう言うライアット様の言葉を受け、アリーが驚いて目を見開く。って!?何ですって!!?


「ちょっ!?アリー!?誰なの!?一体どこの誰なの!?お姉ちゃんに教えなさい!!?」


「ちょっ!?お姉様!?落ち着いて!?顔……近……!?」


私がアリーの肩をガシッと掴んでそう聞くと、アリーは何故か顔真っ赤にして視線を彷徨わせる。

この反応……間違いない……アリーは誰かに恋してる!?一体どこの誰!?アリーに相応しいか私がテストするからすぐにここに呼んできなさい!!!


「ふ〜ん……なるほど……そういう事か……」


私達のそんなやりとりを見ていたライアット様は何故かニヤニヤと笑いながら納得したような顔をしていた。


「まぁ、お前の事だからそれを望んでんだろ!せいぜい応援してやれよ!」


「当然だ。貴様に言われるまでもない」


ライアット様はニヤニヤ笑いながら、近くにいたお父様の肩をポンと叩いてそう言う。お父様は先程の怒りがまだあるのか、憮然とした態度で答えるが、ライアット様は気にした様子もなくエルサさんと共にパーティー会場の方へ向かって行った。


その後、私はヒエンとレイカとキョウカに無理矢理取り押さえられるように着席され、貴賓の人達の挨拶業務に務めたが、私の頭の中はそれどころではない。

アリーの好きな人……頑張る人が好きだって言っていたから、やっぱり考えられるのはリンクス?いや、今はお父様について頑張ってるケインかしら?それとも、自分も宰相目指して頑張ってるグラン様?いやいや、それとも……恋敵が兄でありながらも恋心を捨てられないヴァン王子?いや、やっぱり王道のカイン王子?だあぁぁぁ〜!!?頑張ってる人だけじゃ分からないわぁ!?


そんな風に頭を悩ませていた私だったが、そんな悩みが吹っ飛ぶような出来事が起こる。


「おぉ!なんと美しい!ご令嬢!私を君の花嫁にしよう!」


一応イケメンだけど、やたらバカっぽい男が、アリーの前に立ってそう言って、勝手にアリーの手を取って、そのままアリーの手の甲に…………キスをした。


はぁ!?なんだこのバカは!!?

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