78.クラーケン退治
ヴィオル様の作戦。それはクラーケンにはある好物があるので、その好物を置く事で、クラーケンを誘き寄せるというシンプルな作戦だった。
で、その肝心なクラーケンの好物というのが……
「まさか……クラーケンの好物がスイカとはね……」
私はヴィオル様が大量に買い込んだスイカを砂浜に置きながらそう呟く。
「私もビックリでしたが、クラーケンは時より陸に上がって何かを取ったという話もありましたし、それが恐らくスイカなんだと思います」
いつでも可愛い私の天使のアリーが同じようにスイカを設置しながらそんな事を言う。
「なるほど……けど、スイカを置いただけでクラーケンはやって来るのかしら?クラーケンって鼻とか無さそうだから、スイカの匂いとか分からなさそうだし、基本水中にいるから、陸の様子だて分からないだろうし……」
私がそんな心配をしていると、この作戦を提案したヴィオル様が微笑を浮かべ、海のある一点を見つめる。
「鼻で感じてるかは分からないけど……どうやら作戦は成功みたいよ」
ヴィオル様がそう言うので、私はヴィオル様が見つめていた場所を見ると、そこだけ異常なまでにブクブクと泡立っていた。そして……
ザバアァァァ〜ーーーーーーーーーー!!!!
とてつもない波しぶきを上げて、クラーケンが現れる。波しぶきがこちらにまで飛んで、まるで雨のように降りかかる。
クラーケンはこちらを……というより、スイカを凝視している。本当にスイカが好物みたいね……けれど……
「こちらに近寄ってきませんね?」
クラーケンは威嚇行為のように足をバタバタさせるも、こちらに近寄ってくる気配はない。
「う〜ん……どうやら警戒されてるみたいね」
そうか……スイカの近くに私達がいるから罠を警戒して近寄って来ないのか……
「だったら、私達は離れて……」
「いいえ。どうせ私は残らなきゃいけないんだから、どのみちあそこから離れる事はないわ。だったら作戦変更!現れてくれたなら、さっさと退治してあげるわ!」
ヴィオル様はそう言うと、浮遊魔法でクラーケンの頭上まで飛び上がった。
「ちょっ!?あね……ヴィオル嬢!広範囲の強力な魔法は絶対使ってはダメですよ!!?」
「分かってるわよ!あなたに言われなくても!!」
ヴィオル様は紫色した火炎球をクラーケンに向けて放つ。おぉ……本当に紫色だ……。
とても威力の高い火炎球だったけれど、全部クラーケンの足でガードされる。クラーケンの足は海にいる間は強力な魔法耐性を持ってる上に、クラーケン自身は海の魔物だから、火の魔法が効きにくい。明らかに分が悪い。
「くっ……!?やっぱりあの足が鬱陶しい……!?えぇい!もうこうなったら!!」
ヴィオル様は案外気が短いのか、若干キレはじめ、そして……なんかヴィオル様の上空に巨大な黒い雲が出来てるんだけど!?あれ!?あからさまに強力な広範囲魔法だよね!!?
「くらいなさいッ!!!」
ヴィオルがそう言うと、黒い雲から紫色の雷がクラーケンや、クラーケンの周りの海に降り注ぐ。って!?ちょっ!?そんな事したら!!?
ビシャアァァァ〜ーーーーーーーーーーン!!!!
この雷の魔法は足ではガード出来ず、更に海上にも雷が放たれ、水の電気をよく通す効果もあって、クラーケンは2倍のダメージを受けて沈黙する。
「よし!これは流石に倒したでしょ!」
ヴィオル様はガッツポーズをして喜んでいる。うん。まぁ、流石にこれは完全に倒されたと私も思うけど……
すると、海上から先程の雷の魔法で感電死したと思われる無数の魚の死体が浮かび上がってきた。それを見たヴィオル様は我に返ったのか、苦笑を浮かべ、頰をポリポリとかいて
「えっと……もしかしなくても……やっちゃった……?」
まさにテヘペロというような顔をしてそう言った。カイン王子とヴァン王子とグラン様が、額に手を当てて重い溜息をついた。
何だかんだ問題はあってもこれで終わり。そう……思っていた……
シュルルルルゥ〜ーーーーーー!!!
「えっ!?」
いつの間にかこちらまで伸ばしていたクラーケンの足が、スイカ2、3個とアリーを掴んだ。
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