77.海の支配者クラーケン

クラーケン。別名「海の支配者」


見た目は前世の世界で私がやった事のあるRPGに出てくる巨大なイカだ。当然ながらクラーケンの足も巨大で、その足でよく漁船などを襲ってくるらしい。が、更に厄介なのは……


「クラーケンは海にいる間は足が強力な魔法耐性を持ってる事なのよね〜……」


ヴィオル様が面倒だと言わんばかりに溜息をついた。けど、溜息をつきたくなるのも仕方ない。


まず、当然ながらクラーケンは「海の支配者」と呼ばれる程なので、クラーケンが活動してるのは当然海の中だ。多少なら陸でも過ごせるらしいが、基本は海から出る事はまずない。

おまけに、クラーケンの足は10本あるので、魔法攻撃をしても、その10本の足でガードされてしまう。本体に攻撃したくても、その10本の足が邪魔をしてくるのだ。

もし、クラーケンを倒すなら陸までクラーケンを誘き寄せるか、広範囲の強力な魔法で足や本体含めて攻撃するしかない。前者はそんな事が出来るのか?という感じだから、後者の選択肢しかないけれど、後者の選択肢をすると、海にいる無害な生物まで巻き添えをくらう危険性がある。


それを考えただけでも本当に面倒な相手だなと思う。けど……


「ヴィオル様ってクラーケンと相性が悪いんじゃないですか?確か、ヴィオル様って火属性の魔法使いですよね?」


クラーケンは海の魔物だ。火属性の攻撃はあまり効かないイメージがあるのだけど……


「それなら問題ない。あ……ヴィオルは全属性の魔法が使える」


私の疑問に答えてくれたのはヴァン王子だった。


「えっ!?そうなんですか!?」


「あぁ……公に発表はされてないがな……」


何故か遠い目をしてそう答えるヴァン王子。なんだろう……何故かヴァン王子やカイン王子やグラン様がヴィオル様の説明をするとこんな表情になるんだけど……


「まぁ、と言っても、アリーちゃんみたいに計測不能な数値って訳じゃないけどね」


ヴィオル様はアリーをチラッと見てニコっと笑ってそう言った。


「それでも、バカみたいな数値と威力はありますが……」


「カイン王子。何か言いましたか?」


「いいえ!!?何でも!!?」


ヴィオル様に笑顔を向けられ、カイン王子は慌てて首を横に振る。本当にヴィオル様はいろんな意味で凄いなぁ〜……あのカイン王子が完全に萎縮してるし……。


「まぁ、どのみち上から強力な広範囲魔法を使わないように言われてるから、今日この場で披露する事はないでしょうけどね〜」


ヴィオル様は再び溜息をついてそう言った。まぁ、当然の判断かもしれない。この海は平民・貴族も利用できる場所だから、強力な広範囲魔法で色々されるのはマズイかもね……けど……そうなると……


「クラーケンを陸にあげる事なんて出来るんですか?」


「出来るわよ。あっ!そうだ!良ければみんな手伝ってくれない!お礼はするから!ね?」


ヴィオル様がウィンク付きの笑顔でそう言った。何故だろう……その笑顔には逆らえない何かの迫力があって……私達全員首を縦に振っていた。


こうして、私達はヴィオル様のクラーケンを陸に誘き出す作戦に参加させられる事となった……

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