71.別にカナヅチが知られるのが嫌な訳じゃない

私は人気の少ない裏庭らしき場所で、魔法で水の刃を作って、体操座りで草刈りをしていた。すると、誰かの気配を感じた。気配の正体はヒエンとレイカとキョウカだった。私は3人の方を見ずに遠い目をし……


「ふっ……こんな風に水を巧みに操れるのに、水に嫌われてるかの如くカナヅチだなんて……」


そう言って、私はさっきまで草刈りをしていた水の刃を投げる。それは、木に刺さり、その木がバキバキと音を立てて倒れる。それを見た3人が若干引いてる気配を感じたが、すぐに持ち直し、ヒエンとレイカが私を慰めにかかる。


「アンナ様……その……誰にも出来ない事はありますし……」


「泳げないのぐらい別にそこまで気にする程じゃ……」


と、慰めの言葉をかけてきたけれど……どうやら3人は何か誤解してるみたいね……


「私はね……別にアリーに泳げないのバレて、姉としての尊厳を失うのが嫌だとかそう思ってる訳じゃないわよ……」


「えっ!?違うんですか!?」


私の言葉を聞いてキョウカが驚きの声を上げる。うん。やっぱり誤解してるようね……私が本当に嫌なのは……


「私はね………………泳げなくて必死でもがいてる私のうなぎ犬みたいな顔を誰かに見られるがすごく嫌なのよ!!?」


私の言葉は3人はキョトンとした表情を浮かべていた。恐らく、うなぎ犬の意味がよく分かっていないからだろう。



これもまた、前世から続くトラウマなのだが、私は小学生の頃、初めての水泳の授業で恐る恐る泳いでいたら、足をつってしまい、溺れかけてしまった。すぐに先生が助けてくれたので無事だったのだけど、


「ぷっ……はっははは〜!!!桐島の溺れた顔!うなぎ犬みてぇ〜!!」


と、小学生の頃淡い恋心を抱いていた男の子にそう言われ、ショックでしばらく引きこもってしまった。


友人達からひたすら食べて色々忘れてしまえ!と言われ、暴食をした時期があったが、すぐにお腹を壊して、トイレに駆け込み、しかもその時の腹痛があの時の嫌な出来事を思い出さされ、トイレで泣いてしまった。以来、ご飯は腹八分目で食べすぎないようにしている。


結局、とある妹が主役のアニメを見て、妹キャラ萌えの立派なオタクになったおかげで立ち直ったけれど、泳ごうとプール等に入ろうとすると、あの男の子の顔が思い浮かび、足がまた痛み溺れかけてしまう。以来、私は泳ぐ事はせず、中学も高校もプールのない学校を受験した。



まぁ、そういう前世の事もあり、今世も泳ぐ事は避けるようにしていたのだけれど、アリーのバットエンディング回避の事だけに夢中ですっかり忘れていた。「リリカルスクールラブ」が、中世ファンタジー学園な乙女ゲームなのに、体操着やブルマや水着があったり、水泳の授業なんかまである事に……そういうツッコミどころ要素を込みでゲーム会社が意図的に作った事に……

そりゃあ、最初はゲーム画面越しのアリーの水着姿にはウットリしたけれど、まさか私がこの世界に転生して水泳の授業受けるなんて誰が思うだろうか……それでも言いたい……水泳の授業なんて作るな!?株式会社SIS☆COM!!(リリカルスクールラブの制作会社名)


もう無理だ。おばけ嫌いもバレて、うなぎ犬までバレた以上……もう死ぬしかない。私は再び水の刃を作って、それを首元に当てようとして、慌てて3人のメイドが止めにかかるが、それよりも先に……


「やめてください!!お姉様!!!」


最愛の妹の声がして、思わずそちらを振り向いた私はギョッとする。


私を追ってきたと思われるアリーは…………水着姿だったのだ。

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