49.名前だけはやたらと美味しそう

お供を連れた1人の男性がやたら店内で喚きちらしている。服装や身なりからして間違いなく貴族だろう。やたら紫色で統一してるのはポリシーなのだろうか?


「全く!このお店はなってない!私だけでなく!他の貴族である方々まで待たせるとは!一体どういう神経をしているんだ!?」


どうやら、待たされている事に不満があるみたいだけど、正直それはこの人だけだ。さっきから観察していても、貴族の方々はちゃんとルールを守って列に並んで購入・注文してる。むしろ、この人が騒ぎ立てるせいで、ただでさえ並んでる列が進まなくてイライラしている。


「はぁ〜……またですか……」


シエルは疲れた溜息をついてそう言った。


「またって……シエル。あの人はよく来るの?」


「はい。あの方はブドウ・パインアップル子爵様です」


名前だけなら随分と美味しそうな名前ね。もしかして、ブドウって名前だから紫統一なのかしら?


「あの方は、自分のお抱えパティシエが、ノエルさんに何度も敗れたせいで、自分が経営してるスイーツ店の売上げが下がってるので、時々あぁやって嫌がらせ行為をしてくるんです……」


あぁ、つまりノエルの功績を妬んでってやつね……勝負するなら正々堂々とスイーツで勝負してもらいたいものだけど……


「いつもならノエルさんとリーガルさんが毅然とした対応で追い返してくれるんですけど……」


ノエルは元々はスラム街で育ったせいか、言う時はちゃんと言うし、リーガルはやっぱり商人だからクレーム対応は上手いからね〜……で、その2人は確か2号店の下見に行ってて不在だったわね。つまり、最悪なタイミングで来店してきた訳か……いや、知っていて狙ってやって来た可能性もあるわね。


「すいません。あの娘だけじゃ対応出来ないと思いますから、私行ってきますね」


シエルはそう言って、私達に会釈しブドウ子爵の元に向かった。

う〜ん……今後シエルには「パルフェリア」の2号店を任せたいから、これぐらいの事は1人で対応してもらいたいけれど、流石に難しそうかしら?私は色々悩んだ末に、シエルの手助けをする事に決めた。その為に……


「ねぇ、アリー。ちょっとあの迷惑なお客さんをどうにかしたいと思わない?」


「はい!すっごく思います!!」


「じゃあ……ちょっと私の考えた策に協力してくれない?」


「はい!お姉様の頼みなら喜んで!」


アリーは喜んで快諾してくれた。流石は私の可愛い可愛い天使な妹。さて、それと……


「カイン王子。ヴァン王子。グラン様。ケイン。皆様にも手伝っていただきたいのですが?」


私はニッコリと笑って、マントにフードを被った怪しい4人組に声をかけた。4人は私に声をかけられビクッ!?っとなったが、バツの悪い顔をしてフードをとると、やはりというか、私が名指しした4人であった。


「やはり……気づいていたのか?」


代表してヴァン王子がそう聞いた。が、こんな女性客で溢れかえってるお店で、そんな怪しいマントとフードの4人組がいたら嫌でも目立ちますって……

というのを私が説明したら、4人は更にバツの悪い表情で俯いてしまった。別に怒ってる訳じゃないんだけどなぁ〜……私も4人と同じ立場ならそうするし、いや、むしろ全力でこの可愛い可愛い天使な妹を口説きにかかるわね。まぁ、とりあえず今は4人の罪悪感を利用させてもらいましょ。


「まぁ、もし悪いと思ってらっしゃるのなら、あの騒いでる人を撃退するのに協力していただけませんか?」


私がニッコリと笑ってそう言うと、4人は顔を真っ青にして首を縦に振った。

おかしい……普通に笑っただけなのにこの反応……やっぱり私は悪役令嬢ということなのか……

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