13.公爵令嬢のメイド

私の最高に女神と天使を掛け合わせたような妹を嘲笑うように睨むエリザベス公爵令嬢。それを見て、私はすぐさま始末を実行しようとするも、ヒエンとレイカに止められて実行出来ないので、ひたすら猫のように威嚇するしかなかった。


「エリザベス公爵令嬢。アリー伯爵令嬢はぶつかってよろめいてしまっただけです。私は迷惑をかけられていませんし、迷惑をかけたのはぶつかってきた相手だと思うのですが?」


重たい沈黙を破って発言したのはカイン王子だ。カイン王子の発言に、エリザベス公爵令嬢にぶつかってきた相手さんも言葉を詰まらせた。

なるほど……エリザベス公爵令嬢とぶつかってきた相手はグルなのか……そして、カイン王子はそれを見抜いての発言なのね。流石は時期国王と噂されるだけはあるわ……。


「……これは……どうやらしっかり確認せずに無礼な発言をしてしまい申し訳ありませんでしたわ。カイン王子」


「私への謝罪は不要です。謝罪ならアリー伯爵令嬢へ」


エリザベス公爵令嬢の謝罪にたいして、カイン王子はキッパリとそう言い放った。そりゃそうだ。あんたはカイン王子じゃなくて、アリーに誹謗中傷したんだから、ちゃんとアリーに謝れ!


「……申し訳ありませんでしたわ。アリー=ステインローズ伯爵令嬢」


すっごく苦々しい表情でアリーに謝罪するエリザベス公爵令嬢。って!ヲイ!そんな謝罪の仕方があるか!?もっとしっかり地に頭をつけて謝りなさいよ!!


「これ以上私がここにいるとこの場の空気を悪くしてしまいますわね。部屋に戻り休ませてもらいますわ。行くわよ。キョウカ」


「はい。お嬢様」


エリザベス公爵令嬢がそう言って退室し、エリザベス公爵令嬢と一緒に、専属メイドと思われる黒髪の女性が付き従うように歩く。

が、そのメイドの黒い瞳が私を見た。まるで、その瞳は私を観察するような眼差しだったが、すぐに目線をエリザベス公爵に戻して、エリザベス公爵令嬢と共に退室した。


「……ヒエン。レイカ。ちょっと様子見するからアリーをよろしくね」


「ちょっ!?お嬢様!!?」


「相手は公爵令嬢ですよ!?流石にマズイです!!?」


「大丈夫だって。あくまで様子見するだけだから」


「だったら!私もお供しま……」


「それはダメ。あんたを連れて行ったら確実にバレちゃうから。だから、あなた達はアリーの護衛に集中しなさい。いいわね」


私はヒエンとレイカに有無を言わさずにそう言うと、さっさとエリザベス公爵令嬢を追って駆け出して行った。




気配を断ちながらエリザベス公爵令嬢の後を追うと、エリザベス公爵令嬢が、人気がない廊下付近で立ち止まった。


「……キョウカ。ゴロツキを何人か雇ってアリー=ステインローズを襲わせなさい」


はぁ!?ちょっ!?あんた何を言ってるの!?バカなの!!?


「お言葉ですがお嬢様。王城は警備は万全です。それに、王城で問題を起こせばそれだけ大問題です」


メイドは淡々とこの仕事の依頼の危険性を語った。が、公爵令嬢は……


「あら?あなたの腕なら万全の警備態勢からゴロツキ数人を入れさせるぐらい簡単でしょ。それに、問題が発覚したところで、ゴロツキの言葉なんて誰も信用しないでしょう」


と、言い放ったのだ。ようはゴロツキならいくらでも切り離せるし、公爵令嬢の力をもってすればいくらでも事件を塗りつぶせるって言いたい訳か……


「……かしこまりました。お嬢様」


これ以上の問答は無意味と悟ったのか、すぐに了承の返事をするメイド。それを見て満足そうにエリザベス公爵令嬢は微笑んだ。


「たかが伯爵令嬢如きが、ちょっと魔力数値や属性があるからって、チヤホヤされて……少し現実の厳しさを教えてあげないとね」


そう言って笑って去って行くエリザベス公爵令嬢。私は怒りが込み上げてきたが、すぐにその怒りは引っ込んでしまった。何故なら、メイドが私が隠れている柱をじっと見ているのだ。ついさっき、私を観察するようなあの目つきで……思わず怒りの感情も何もかも消して無となり、気配をひたすら消すよう心がける私。


「何をしてるの?キョウカ。早く来なさい」


「……はい。お嬢様」


エリザベス公爵令嬢に声をかけられ、柱を見るのやめて、エリザベス公爵令嬢に再び付き従うように歩き出した。

ふぃ〜……危なかった……やっぱヒエンとレイカを残したのは正解ね。完璧に気配を消したはずなのに疑われるんだもん。あのメイドは厄介だわ……。


浅はかな面が目立つエリザベス公爵令嬢や、エリザベス公爵令嬢が雇うゴロツキよりも、あのキョウカと呼ばれたメイドが1番の難敵かもしれない。

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