12.いかにも悪役令嬢らしいキャラが現れたけど、悪役令嬢って私じゃなかったっけ?


「お嬢さん……私といっきょ……グハァ!!?」


「お嬢さん!よければ俺と一緒におど……グバァ!!?」


「お嬢さん!俺といっぱ……クベェ!?グホォ!?グバァ!!?」


私はアリーに近寄る虫(モブの貴族男子)を、小石程度の魔力弾を指弾の要領で飛ばして撃退していた。特に、最後の奴には何発をぶつけた。おかげさまで、アリーの周りに貧血で倒れた(ということになってる)人が続出している。

ちなみに、私には誰一人として声をかけてくる者はいない。私を欲してるお貴族様なんていないから当然だろうけどね。まぁ、私も誰かと踊りたい訳じゃないしね。


「アリー様。よければ一曲。わたしめと踊っていただけませんか?」


今度アリーに声をかけてきたのは、現宰相の息子のグラン様だ。マウロー家は私達と同じ伯爵家でありながら、公爵や侯爵家を抑えて宰相になった凄い家柄だ。流石に、攻略対象者でもあるし、この人に攻撃する訳にはいかないか……


「はい。喜んで」


アリーも恭しく淑女の笑みを浮かべて、グラン様の手を取りダンスを開始した。

カイン王子やヴァン王子が10歳になったばかりで、今集まっている貴族のお子様方も皆似たような年齢だ。本格的な社交デビューは15歳からと言われてるので、今貴族のお子様方がやっているダンスはその社交の為の練習場の意味も兼ねている。だから、割とたどたどしい動きのダンスをされる方々が多い。


が!うちのパーフェクトで!ビューティーで!プリチーで!エレガントな妹は一味違った!!一度、妹が踊ればそれはもう一つの芸術で!身内贔屓抜いても!誰がどう見ても!素晴らしいダンスである!まるで!そこに一輪の綺麗なバラが咲き誇ってるようである!こうなると、一緒に踊ってるイケメン(グラン様)が最早漬物よ!美味しいご飯を更に美味しくいただくための物でしかないわ!あぁ〜……魔法映写機で撮りまくりたい……過去ストーリーはそんなに描かれてないから、凄い貴重なスチルなのに……


ん?魔法映写機が何かって?簡単に言ったらカメラだ。ちなみに開発したのはマダムA(私)。思い出の記録を残せると評判な反面、盗撮などの犯罪も横行してる為、こういう場での魔法映写機の利用は禁止されていた。非常に残念である。


「次は俺と踊ってもらえるか?」


おっと?次はヴァン王子のターンのようだ。ヴァン王子はややダンスが苦手なのか、動きがやたらとたどたどしい部分がある。けど!そこを!うちの美し可愛い女神天使な妹は完璧なリードで上手くヴァン王子と踊ってみせた!流石ね!私の可愛いアリー!あぁ……やっぱ……魔法映写機使いたい……


「次はこの私とお願い出来ますか?」


次はある種、アリー争奪戦の大本命であるカイン王子だ。流石、時期国王との噂が絶えないカイン王子。優雅なステップでアリーをリードしていく。そのリードについていくアリーのなんたる女神天使な事か!!


が、事件はここで起きた。


ドンッ!!!


「きゃっ!!?」


アリーが誰かにぶつかって、よろめいて転びそうになったが、それをカイン王子は素早く支える。


「あら〜?ステインローズ伯爵家ではまともにダンスを教えてもらってないのかしら?人にぶつかって勝手によろめいて、あげくにカイン王子にご迷惑をかけるなんてね〜!」


そう言って、突然紅いドレスを着た金髪のこれまた紅い瞳でつり目のいかにも悪役令嬢な人が現れた。うん。状況がよく分からないが、私の敵だ。排除あるのみ。しかし、私が排除しようとするのを察したヒエンとレイカに羽交い締めされて止められた。


「ヒエン!レイカ!何で止めるのよ!?アイツは私の可愛い可愛い女神で天使な妹にちょっかいを出してきたのよ!排除あるのみだわ!キルユー!ファックユーよ!!読者もそれを望んでいるはずよ!!」


「おっしゃってる意味が分かりませんが!おやめください!流石に相手が悪いです!!」


「あの方は三大公爵家と言われるマグダエル公爵家の一人娘!エリザベス=マグダエル様です!!」


えっ?マジで……めっちゃ煌びやかなドレス着て、公爵家で、つり目で、名前がエリザベスって……絵に描いたような悪役令嬢の登場ね……ん?あれ?待って……悪役令嬢って私じゃなかったっけ?


いかにもな悪役令嬢の登場に困惑と先行きの不安を感じる私だった……

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