9.その涙は私か「私」か

リーガル商会にて今月の報告会を終えた私は、リーガル商会を出て家への帰路についた。

本当に、リーガルは私の考えていた通りに動いてくれるいい商人だ。色んな人と巧みにやりあっていく姿を見てると、リーガルって割と王様とかやれそうだな〜と思った事もある。


そもそも、まだノイエル町がスラム同然だった頃に、リーガルを訪ねたのには理由があった。それは、リーガルが貴族相手ではなく、平民相手に安価で品質のいい物を売る商売をしていたからだ。


大抵の商人というのは、基本は貴族をターゲットに商売をする。まぁ、同然だろう。割とこの国には差別的な物はあまりないとは言え、貴族が平民よりお金があるのは間違いない。だから、たくさんのお金を得るなら貴族をターゲットにするのが普通であろう。


しかし、私の考えは違った。私は平民相手にこそもっと商売すべきだと考えていた。


その理由の一つとして、貴族という人々の少なさだ。貴族は公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵とある。公爵が1番身分が高いが、三大公爵家と言われているように、公爵家は3家しか存在しない。侯爵家で5家。伯爵でも確か10家だったはず。子爵と男爵は何家か存在するが、財力は平民よりやや高い程度である。

確かに、高い身分で財力のある貴族をターゲットにするのは多くの利益が得られると思うが、正直もっと利益を稼ごうと思うなら、安価でも数多くいる平民達相手に商売した方が利益は数の多さで十分な利益が得られる。


もう一つの理由は、存外貴族というのが無駄にお金を使わない主義だからだ。

これは、自分が伯爵家だから分かったのだが、貴族だからってひたすら散財してる貴族ばかりではない。中には成金趣味の貴族もいるにはいるが、基本貴族はよっぽどの事はない限り無駄遣いとは縁遠い。

それというのも、その昔大飢饉が起きた時、貴族達の無駄遣いもあってウィンガル王国が一度潰れそうになった事があるらしい。その時代の国王様が質素倹約政策を出し、無駄遣いが酷かった貴族をお取り潰しにしたおかげで何とかしのいだらしい。高い身分の貴族が減ったのもこれが原因かと思われている。以来、貴族達はなるべく無駄な出費はおさえるように財布のヒモを固く閉じてる。

そこからふまえて考えても、多くの蓄えもあって、無駄に出費しない貴族よりも、蓄えが少なく、物が常にいる平民相手の商売が毎月のように収益を得られるのである。


その私の考えにピタリと当てはまるように商売していたのがリーガルだった。だから、私リーガルを信頼し、リーガルに私が開発したり採掘したもの商売するように頼みこみ、それは見事に成功して、ノイエル町が出来上がっていったのだ。


しかし、ふと思う。私って前世でただの女子高生だったのに、こんな商才や経営学は一体どこから湧いてきたんだろうか?と……転生した事で色々チートになりすぎたのか……あるいは……


そして、私はふとゲームの「私」の独白を思い出す……




魔力検査……あれの結果から何もかも変わってしまった。従者は全て妹を構うようになり、両親も口では私を可愛がっていても、妹を誇りに感じているのは間違いなかった。

だから、私は死ぬほど勉強した。教育係も私の面倒は見たくないので1人でだ。淑女としてのマナー・ダンスレッスン・領地の経営学や商売のノウハウまで……


けれど、私の努力は何も変わらなかった。全てにおいて妹が優っていた。更には、私達2人に婚約者が出来、跡継ぎがいないからと、分家からやってきた義弟にまで劣っていたのだ……


私がどれだけ頑張っても無駄な努力だと嘲笑われる……


私がどれだけ頑張っても誰も私を見てくれない……


私は所詮は……妹の……劣化品……





「あ……れ……?私……?これ……?涙……?」


気づけば、私の頰に涙が溢れていた。


果たして、この涙を流したのは、ゲームの「私」の不遇さを思い出し流した私の涙か、あるいは、「私」の涙か……

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