10-3 力不足
「あなたが気に病むことじゃないよ。世の中には、どうにもならないことの方が多い。これだって、そのひとつというだけなんだから。大きなうねりには抗いようがないってだけ」
カキドは気だるげにそう言うと、テーブルの端にひじをついた。
仕切り壁の半ばに開いた窓から差す光が、カキドの右半面を暗がりに浮かび上がらせている。穏やかではあるが、感情を感じさせない面持ちだった。
死者ではなく、ジェラールを慰めるあたり、カキドにはわかっているのだろう――『とらわれ者』と聞いて、ジェラールが動揺するだろうことを。
前
彼はいくらでも交渉材料を見つけ出し、あざやかなまでの手腕で同胞を自由にしていった。一般民と親しくしていたのも、その手段の一つだったのかもしれない。
このままいけば、
キースは殺され、
まだ未熟なジェラールには、キースのような無尽蔵のアイデアもなければ、交渉の手腕もない。
ジェラールが一般民に抱く怒りは、『とらわれ者』らを助けてやれない自身への憤りの裏返しだった。
「俺は、キースのようにはやれない。……今はまだ、な。いずれ、一人残さず
そのためにも、十分な容量を持つ、安定したタンクが不可欠だ。ジェラールは、やりきれなさを飲み下し、『空の破片』に視線を戻す。
浮遊カンテラの群れに開いた穴から差し込んでくる日光の帯に、神々しく白光りする偉容。見つめていると、意識ごと吸いこまれてしまいそうになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。