8-5 受付係
ここを訪れるのは、ずいぶん久しぶりだ――ジェラールは、エントランスと大広間をつなぐ廊下の扉から、エントランスを覗き込んだ。
ただでさえ圧迫感を感じる狭さだが、壁や天井から張り出した木組みと、出入り口側と支部側を隔てるように据えられたカウンターの存在が、息苦しさに拍車をかけている。
とても居心地がいいとは言えないエントランスには、ジェラールの前に、二つの人影があった。
普段からその場を動くことなく人の出入りを監視している木偶。そして、退屈そうに入出記録簿に落書きをしている金髪の若魔術師――ライナルトに罰として受付係を命じられた、ワルターだ。
ジェラールが軽い挨拶とともにエントランスに足を踏み入れた途端、ワルターが飛び上がる。
比喩でなく、座っていた椅子からこぶし一つ分ほど尻を浮かせたのだ。
「長兄様? ど、どうして……?」
エントランスでは、紹介状を持ってやってくる外部の魔術師の出入りがある。
支部長であるジェラールは、万が一を考えて、エントランスに出ることを控えていたのだった。
とは言え、来客などめったにあるものではない。ライナルトも、それを分かっていて、ここに来るようジェラールに勧めたのだろう。
……それにしても、幽霊でも見たかのような驚きぶりではないか? ジェラールは思わず苦笑した。
「ああ、とりあえず座ってください! 俺、立ちますから。立ってる方が好きなんです!」
ワルターが慌てて立ち上がり、自分の座っていた椅子をジェラールに差し出す。
ジェラールは、気の利いたことが言えない兄弟を微笑ましく思いつつ、その好意に甘えて、腰かけてから話を切り出した。
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