7-5 新たなタンク
「それだ。それを、新しいタンクとして使えばいい」
「えっ? 〈それ〉ってまさか、『空の破片』のこと? ……すごいこと考えるねえ」
カキドは、珍しく本気で驚いたようだった。
『空の破片』のことは、おそらく誰にも、まだよくわかっていない。どんな危険があるかわからないと同時に、どんな力を秘めているかも知れていないのだ。
それを活用できるなら、直近の問題――タンクのことだ――を解決できるだけでなく、活用法そのものが、支部にとって大きな財産となる。
もちろん、『空の破片』が有害なものであったり、タンクとして活用できない可能性はある。だが、挑むだけの価値もあるはずだとジェラールは踏んでいた。
その価値を評価する立場であるカキドは、しばし考えこんだ末、長いため息をついてから答える。
「わかった。出かけついでに、近くの『空の破片』を軽く調べてみる」
「無理はするなよ。……って、こんな夜中から外出なんて、大丈夫か?」
「僕が外で会う相手っていったら、大抵後ろめたいところのある人たちだから。夜の方がいいんだ」
そう言うと、カキドは自嘲気味に微笑んだ。彼女自身もまた〈後ろめたい〉ところを持っているとでも言いたげに。
カキドが関わる一般民や、外部の魔術師は、必ずしも良心的な相手ばかりではない。そんな相手と付き合っていく以上、影響を受けずにはいられないのだろう。
ジェラールが労りと慰めを口にする前に、カキドが皮肉めいた笑みで茶化す。
「『空の破片』の下調べだなんて、そんな危ないことさせてさ。明日の朝、僕が帰ってなかったら、ジェロアのせいだからね。……あっ、そうだ」
カキドは、何かを思い出したようにソファから立ち上がると、支部支給のマントに手を突っ込んだ。
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