終章

鬼武者と朝長より、ごあいさつを申し上げます

「皆様、こんばんは。今宵は『ありあけの月』本編開幕3日前(予定)に伴う、ごあいさつに伺いました」


「ふふ。そなたの小狩衣は『菖蒲重』か」

「朝長異母兄上のお召し物(狩衣)は『藤重』ですね」

「本編では新たに仕立てたゆえ、先だって袖を通してみたよ。そなたもだろう?」

「そうでございますね」

「まぁ、そなたの初出番は──」

異母兄上あにうえ

「ふふ。わかっているよ。えぇと……『〝ねたばれ〟は好まない方が多い』だったかな?」

「作者は、そう申しておりました」

「作者はむしろ、先に教えて欲しい派だそうだよ。答えがわかるまで、もやもやを抱えているのが落ち着かないらしい」

「……それは、ここで必要な情報でしょうか?」

「さぁ、どうだろうね。ともかく、そなたの装束については、謎のままにしておこう」



「──さて。朝長異母兄上や私、その他『小話集』に出演しておりました者たちが、この度、本編へ移ることと相成りました」

「それに伴い、この『小話集』も、ここで閉幕とさせていただきます。鬼武者の活躍ぶりは、ぜひ本編のほうでお楽しみいただければと存じます」


「朝長異母兄上も、活躍なさるでしょう?」

「ふふ。私は、どうかな」

「む……今から、作者のもとへ参りましょうか」

「それはやめたほうが良いやもしれないね。本編の舞台を作るのに、大量の資料と体調不良と日夜戦っていると耳にしたよ」

「……私たちの動く舞台ができないと、困りますね」

「そう。何のために『小話集』から移るのか、わからなくなるゆえ」

「承知致しました」

「ふふ。良い子だ」



「──というわけで。今まで『小話集』をお読みくださった皆様、まことにありがとうございました」

「本編も、ご愛顧いただければ幸いに存じます」

「4月8日子一刻(午後11時)、本編にてお目にかかれますよう、私たち出演者一同、心より願っております」

「開幕まで、今しばらくお待ちください」



 ──閉幕






「最後の長台詞、よく噛まずに申せたね。明日、父上に褒めていただこう」

「ありがとうございます。異母兄上も無事にお務めを果たされましたこと、お祝い申し上げます」

「ふふ。ありがたいことだね。──さて、鬼武者。もう、子一刻(午後11時)を回っているゆえ、私室へ戻ったらすぐに寝なさい」

「はい、異母兄上」



 ──小話集、閉幕

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ありあけの月 小話集 香居 @k-cuento

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