No.6-7

 破綻は一瞬の間に起こった。

敵の兵器ではこの機体を見つけることもかなわない……少なくとも、上官達はそう言っていたはずで、私達はそれを信じていた。疑うことすらしなかった。

しかし。

それが嘘だったのか、敵が何か新しい手段を使ったのか、或いは上官達の言うそれが単なる過信に過ぎなかったのかは定かではないが、私の乗っていたあの機体は、敵にロックオンされた

はじめに警告音が鳴り響いた時、私は機器のエラーを疑った。

隊長からの無線が入る。

「全機散開! チャフ、フレアを撒け!」

 私を含む四機の戦闘機はその命令に従い、散開の上で欺瞞のためのチャフ・フレアをばら撒いた。

敵からのロックオンを受けた際の回避行動について私達は学んでいたはずであったが、その一連の動作に問題がなかったかと問われれば……分からない、と答える他ない。今まで一度もそうした場面に遭遇したことはなかったし、これからもそうであろうと思い込んでいた。

私がその時。四機のうち、私の機体だけが撃ち落とされたのか。それとも、ワルキューレ小隊そのものが壊滅したのかさえ私には分からない。

そこには既に完了なされた事実しか存在しない……つまり、敵の放ったミサイルが私の機体に命中したという事実だけが、そこに残っている。

爆発音と衝撃の中で、私は叫ぶ。

「メーデー、メーデー、メーデー。こちらワルキューレ03……」

 私は確かにそう言った。何度も何度もそう叫び続けた。緊急脱出装置に手を伸ばして、轟音と共に機体から吐き出され、パラシュートを展開し、地面に落ちていくまでの間まで、ずっと私はそう言い続けた……もはや誰の耳に入ることもないその言葉を、ずっと。

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