No.5-54

「……まだ策は残されています」

 メグミ・トーゴーは言った。その場に居る全員が、睨むように彼女を見た。

軍曹以外の全員が『彼女はきっと防衛陣地の人々を見捨てろ』と言い出すのだと確信していた。しかし、彼女の言った策はそれをさらに上回る、激烈な回天の策であった。

「エダ軍曹。あなたは先程言いましたよね? 敵兵の位置さえ分かれば、と」

「そうだ。確かに、そう言った」

「我々は今、確実に敵兵が居る場所を。それも、沢山の敵兵が集っているであろう場所を知っています……それはつまり、三箇所なのです」

 彼女。メグミ・トーゴーを除く全兵士が絶句した。

「今、防衛戦闘を行っている陣地三箇所。つまり、アルファ・ブラボー・チャーリーには確実に敵兵が、それも多数存在しています」

 一拍置いて、彼女は言葉を繋げた。

「我々に勝算があるとするなら、その一点にしかありません。我が軍の防衛陣地ごと、敵兵に砲を打ち込むのです」

 軍曹は無言で腕を組んでいる。

ある兵士は言った。

「お前、自分じゃないからと言って適当いってるんじゃないだろうな!」

 メグミ・トーゴーは堂々と答えた。

「……ならば、我々全員で銃剣を構えて突撃しましょうか。いいかもしれない。感傷的で、それでいて実に無意味だ」

 また別の兵士が言った。

「それならまだ撤退した方がマシじゃないのか」

 メグミ・トーゴーは答えた。

「仮に皆さんが、自らの身を犠牲にすれば戦闘に勝利出来る。連隊の命脈を保つことができると分かっていたとして、それを拒否するのでしょうか?」

 最後に、軍曹は質問を投げかけた。

「サリー・レーンもシルヴィア・レインも、君の知らない顔じゃあないはずだ……覚悟はできているのか?」

 メグミ・トーゴーは短く答えた。

「無論です」

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