No.5-42
そうして戦闘は開始された。メグミ・トーゴーとサリー・レーンの二人がポイントPを撤退してから十八時間経ってからのことであった。
白昼の中、僅かな砲兵戦力によって敵の進軍を停止させる。直後、煙幕によって敵軍の物理的な視界を遮った。その白煙の中を、一台の車両がひた走る。
敵戦車兵がその存在に気が付いた時、既に車両は敵戦車と戦車の間に入り込んでいた。
車両は一台目の戦車の横につける。砲手、アンネ・スカーシュゴードは一発目を発射した。敵戦車後部に存在する動力機関に命中した砲弾はその車両の動作を停止させた。
敵戦車部隊は後方の歩兵隊に支援を要請した。その間にも無反動砲が搭載されたその車両は撃破数を増やしていく。二、三……。
敵軍の戦車の弱点。それは車両後部に配置された動力機関であった。
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンが組み合わされたこの動力機関は戦車の最高速度を上昇させたが、同時に整備性を著しく悪化させた。一度破壊されたこの動力機関において小手先の修理は不可能であり、一度破壊されれば、動力機関を丸ごと新品と交換するしかない。
後方の歩兵隊がイヴ・リヴィングストン及びアンネ・スカーシュゴード両名の乗る車両に向けて機銃を撃ち放つ。
それらを避けながら、彼女たちは目標とされた撃破数を実現するために、狙いを定める。
目標とされる撃破数は、四両であった。確認される敵戦車数が六両であり、その損害が四両を越えれば、敵軍には撤退の選択肢が見えてくるはずだ、とイーデン・スタンスフィールド軍曹は考えた。
四両目の撃破の後、彼女たちから距離を取った五両目の戦車は、残された友軍に命中するのも厭わず、主砲を撃ち放った。
一発目は外れ、二発目は命中した。そして両名の乗る車両は停止し、集中砲火が浴びせられ、両名は死亡した。
しかし、作戦目標は達成された。
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