No.5-10

 作戦第一段階において発射された巡航ミサイルのうちの幾つかは敵陣の迎撃システムにより撃墜される。それらの網にかからなかったものも敵迎撃機による誘導ミサイルによって撃墜され、第一波における巡航ミサイルの全ては撃墜される。しかしこれは予想通りである。

重要なのはこの次の段階。つまり、第一戦闘団所属戦闘機による敵戦闘機への攻撃である。第二波の巡航ミサイルと、戦闘機から放たれる本物のレーダー照射を受け、敵戦闘機は混乱しながらも回避行動を取る。

これこそが彼女の狙いである。つまり、敵航空機が一時的に無力化されれば、それで良いのである。

自軍戦闘機による誘導ミサイルの発射後、地上航空基地で待機していた残りの二機が発進する。第一波における自軍戦闘機は帰還を開始する。この間にも第三波の巡航ミサイルの発射準備が行われる。

こうして、敵軍の保有する航空機郡は基地に拘束されることとなる。制空権の確立していない状況下で爆撃機を発進させようとする司令官は稀であり、彼女の意図に気がついていない限り、それを実行するという発想に至るのは困難であろう。

こうして、彼女の目論見通り、アルファ地点付近において、空軍の空白……つまり、彼女が言うところの『限定的制空権』が確立されることとなる。

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