エピローグ 『ニコラスは日常に戻る?』

 

 どうやらコンは俺がコンと命名して、その名前の響きから狐っぽいと俺が印象を持った時から密かに計画を練っていたらしい。


 明確な切っ掛けとなったのは【迷宮ダンジョン】で【緋緋色金ヒヒイロカネ】を手に入れた時。


 通常なら世界最強クラスの武器を作れる金属を見た時、コンはこれを核に出来れば凄い動力源を作れるのでは? と思ったらしい。


 それから俺が倒した魔物素材や金属素材、薬品なども色々と併用して自分の肉体となる【体外用生体ユニット】の制作に全精力を費やしてきた。


 そう。【緋緋色金ヒヒイロカネ】を動力にしていると言ってもコンが作り上げたのは生体ユニット――つまり生きている生身の体だ。


 だが、作り上げたは良いものの、その肉体はコンとのマッチングが上手くいかず起動出来ない状況だった。


 そんな時にイセリアが精霊契約に成功したという報告を聞き《これだ!》と思ったそうだ。


 コンは精霊と似た性質を持つ魔力の身体を持つ【使い魔】なので、作り上げた肉体と疑似的な精霊契約を結ぶことが出来ればマッチングが上手くいくと考えた。


 そうして完成したのが【緋緋色金ヒヒイロカネ】という伝説的な金属に自分を疑似的な精霊として宿した【精霊機関エレメンタル・チェンバー】というわけだ。


 その出力は本人の言う通り事実上無限大。


 純粋で高濃度の魔力を無制限に精製出来るので、俺には不可能だった上位の兵器群も自在に使いこなせるようになっていた。


 ちなみに便宜上、この状態になったコンを[覚醒状態]と定義しておくが、その[覚醒状態]のコンの魔力処理領域の使用率は74%オーバーというとんでもないものだった。


 ぶっちゃけ俺が自衛出来るかどうかというギリギリの状態で、とてつもなくコンがパワーアップする代わりに俺が無防備になるというリスクがある。


《大丈夫です。マスターは私がお守りします》


 まぁ、兵器群を完全に使いこなせるコンが護衛なので心配ないと言えば心配ないのだが、それでも普段使いするには余りにもリスクが高い。


 そういうわけでコンを[覚醒状態]にするのは緊急時のみということになった。


《そんなぁっ! 折角マスター好みのメロンを作り上げたのにぃっ!》


「うん。あれは……本当に見事だった」


 金髪金目のモフモフ狐美女巫女が理想のメロンを装備しているとなると、それはもう大好物中の大好物なのだが……。


「アイーシャ達に見られたら困るんだよねぇ」


《がぁ~ん!》


 唯でさえ3人のメロン級の美女と付き合っているというのに――アイーシャとは結婚までしたというのに、迂闊に不和の種は持ち込めない。


 コンには悪いが[覚醒状態]は俺が単独行動している時に限定させてもらった。


「というか本当に感情豊かになったなぁ」


《今まで生体ユニットの制作に処理能力を取られていましたから》


「……なるほど」


 今まで俺のサポートが必要ない時間は全て生体ユニットの制作に費やしていたようだ。


 その結果として処理能力が取られ、半場機械的な対応になっていたわけか。


 勿論、最初からそうだったわけではなく、徐々に成長していたのだろうが、その成長を生体ユニットの制作で制限されていたということが真相だろう。


「というかさ、その生体ユニットの制作許可を取った時、俺が寝ぼけている時を狙ったよな?」


《……ナンノコトヤラ》


 うん。こいつは想像以上に成長している。


 というか、どことなく俺に似ている気がする。


《私はマスターの無意識から作られた存在なのですから、マスターに似ているのは当然かと》


「……そうだな」


 言われてみればその通りなのだが、どうにも納得いかない。






 コンのことは兎も角、王国の方は【超過暴走スタンピード】で大ダメージを受けていた。


 5万人を動員した討伐だったのだが、その内の15000人以上が戦死という結末を迎えたので当然だ。


 後で聞いた話によれば魔法学院にも徴兵の話が来ていて15歳以上の生徒は行軍に参加していたとか。


 イセリアとアルティーナは年齢制限に引っ掛かったお陰で無事だったわけだが危ないところだった。


 で。王国は深刻なダメージを受けたわけだが、それはそれとして戦場で活躍した者に報酬を与えないわけにはいかなかった。


 勿論、1番活躍したのは誰が何と言おうとも俺なのだが、王宮への召集をきっぱり断ったので代理のクライサスが色々と頑張ってくれた。


「王に召集されて代理を指名するなんて前代未聞ですよ?」


「どうせ下級貴族にでもして好き勝手に使おうとか画策してただけだろ? そんなもんに応じる気はないね」


「まぁ、ニコラスさんが来ていたら子爵に任命する予定だったようですけど」


「だと思った」


超過暴走スタンピード】で大打撃を受けたこの国に必要なのは圧倒的な武力を持つ英雄だ。


 そういう英雄を下級貴族に任命して【国に仕える】という状況を定着させて強制的に危険な仕事を割り振る。


 そうやって実績を上げさせて他国への牽制に使うわけだ。


「でも良かったんですか? 報酬として用意されていたのはオリハルコンの武具一式でしたよ」


「オリハルコンくらい腐る程持っているよ。【緋緋色金ヒヒイロカネ】なら少し考えたけどな」


「それって冗談抜きで伝説の金属なんですけど」


「【迷宮ダンジョン】の第50階層でボスを倒したら普通に手に入ったぞ」


「……その階層は一般的には未踏破階層です」


 クライサスは呆れていたが、クライサスなら第50階層くらいは1人でも……。


(罠とかあるし難しいかな?)


 ちょっと相性が悪いかもしれない。


 だからこそクライサスは探索者ではなく冒険者をしているわけだし。




 ◇◇◇




 今回の一件で1番被害を受けたのは辺境の町リセだった。


 そして町の復興の為には色々と足りないものがあるわけで……。


「お金を貸してください」


「……いくらだよ?」


 俺はギルドマスターに金をせびられていた。


 まぁ、国がダメージを受けているので復興資金とか出ても雀の涙程度だし、これは仕方ない。


「散々荒らしまわって家を壊されて陣地の材料にされましたから、復興にはそれなりの資金が必要なんですよ。とりあえず白金貨200枚くらい貸してください」


「とりあえずで言う額か」


 俺は嘆息しつつも【収納魔法アイテムボックス】から白金貨の入った袋を取り出して机の上に置いた。


 金なら使いきれない程に余っているので貸すくらいなら問題ない。


「返済は出世払いでお願いします♪」


「……ギルドマスターって出世出来るもんなのか?」


 返す気があるのかどうかは至極疑問だ。


「そうそう。代わりと言ってはなんですが少々興味深い情報が入ってきましたよ」


「情報?」


「ええ。奴隷として売り出されていた1人の少年が実は元貴族だったという情報です」


「…………」


「戦争のどさくさで奴隷商の元を逃げ出した少年は知り合いの貴族を頼り、その貴族に自分が奴隷になった経緯を話し……母親の救出を依頼したそうです」


「その少年の名前は……?」


「カルロスだそうですよ」


「…………」


 なんともまぁ、今更というかなんといか。


「まさか、このタイミングで見つかるとはなぁ」


 先日、アイーシャから生理が遅れていると嬉しそうに報告を受けた。


 まだ様子を見ている段階だが恐らく俺の子を身籠ったのだろう。


 そのタイミングでカルロスが――アイーシャの実の息子が見つかるとは妙な因果を感じるね。


「どうしますか?」


「勿論、会いに行くさ。ここで下手を打てないからな」


 都合が悪いからと言って隠蔽すればアイーシャの信頼を失いかねない。


 どうせ旦那が死亡していることは確実なのだから、俺は今のアイーシャの夫としてカルロスに堂々と会いに行けば良い。


 勿論、アイーシャに会わせるのは安定期に入ってからにする予定だが。






「おかえりなさいませっ♡」


 俺が家に帰るとアイーシャが笑顔で出迎えてくれた。


 まぁ、家と言っても元の家は陣地を作る為に壊されてしまったので、今住んでいるのはテントみたいな小さな簡易住居だが。


 金はあるので家を建設することは可能だが、何と言っても冒険者ギルドくらいしかまともな建物が残っていないので軒並み建て直しになる。


 その為の資金として俺が白金貨200枚も出したわけだが、そうなると俺の家が建つのはいつになるのやらって話だ。


収納魔法アイテムボックス】持ちで食うものに困らず住む場所も簡易的ではあるが持っている俺が、住む家を失い食うのも困っている住人を押し退けて先に家を建てるのは無駄に恨みを買いかねない。


 そういうわけで暫くの間、俺とアイーシャは狭い簡易住居で暮らす羽目になるだろう。


 まぁ、広い家があったとしても俺とアイーシャは一緒に寝るわけだから意味はなかったし、狭い環境だから公然と俺とくっついていられるのでアイーシャは御機嫌だ。


 寧ろ、こういう環境だからこそ2人の距離がより縮まってアイーシャの生理が遅れるような事態になったとも言える。


 今後、安定期に入るまでは暫くお預けになってしまうが。


「~♪」


 アイーシャ本人は俺にピッタリとくっついているだけで満足のようなので、暫くは――セレーナとエルティーナに会いに行く以外はずっと傍にいる予定だ。


 折角アイーシャが身籠ってくれた――かもしれない俺達の子供なので大事にしたいと思う。


(カルロスに会いに行くのは……近日中ってことにしておくか)


 少なくとも今日明日に会いに行く必要はない。


 もっと住環境が安定してから――それにギルドマスターから色々と情報を仕入れてからでも遅くはないだろう。




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【異世界に転生したんだが魔法が使えないと言われたのでメロンを収穫してみる】 @kmsr

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