第19話 『超過暴走、始まる』


 俺は1ヵ月という時間を使って可能な限り準備を進めてきた。


 まぁ、準備と言っても、どちらかというと女達との心の絆を深めて心の準備を整えてきたという方が正しい気もするが。


 同時に町の避難は進み、国がかき集めてきた兵士と戦える一般人が可能な限り徴兵されて最前線である町に集結して【超過暴走スタンピード】を抑えるための陣地の製作が急ピッチで開始された。






 そうして色々な意味で万端という体勢で迎えた1ヵ月後なのだが……。


「なぁ、クライサス」


「……なんですか?」


 集結した軍隊、約50000を眼下に捉え、その上空で俺とクライサスは目の前の光景を見ていた。


「こいつら、どこから湧いてきたんだ?」


「……僕が聞きたいくらいです」


 俺はこの1ヶ月間、心の準備だけではなくクライサスと打ち合わせて広範囲を索敵して見つけた魔物は可能な限り狩ってきた。


 魔物との戦闘時間よりも索敵時間の方が大幅に取られたので狩れたのは約8000匹というところだが、2人で1ヵ月を掛けて8000なら大金星と言っても良い成果だ。


 正直、周囲の魔物を狩り尽くしてしまった感があったので、ひょっとしたら【超過暴走スタンピード】が起こらない可能性も考えていたくらいだというのに――俺達の目に映るのは地平線の果てまで大地を埋め尽くさんとする魔物が大軍団。


 数えるのも馬鹿らしいが、数えなくても確実に100万以上いるのは間違いない。


 俺とクライサスの索敵から逃れ、本当にどこから湧いてきたのやら。


「おまけに……あれはなんだよ?」


 更に魔物の大軍団の後方に控えるように聳える大きな黒い巨体。


 推定だが明らかに50メートル以上の高さまで聳える巨大過ぎる――竜。


「僕も文献でしか読んだことはありませんが、あれは恐らく……【古代竜エンシェント・ドラゴン】だと思います」


「この馬鹿みたいな数だけでも勘弁して欲しいのに、大ボス付きかよ」


 今のところ【古代竜エンシェント・ドラゴン】は後方で控えて動く様子を見せないが、それでもあそこに居るだけで地上の兵士には物凄いプレッシャーだろう。


 あまりにも巨大過ぎるお陰で、相当距離があるというのに地上の兵士達からも目視出来てしまうので既に大部分の兵士達は及び腰だ。


「なぁ、クライサス」


「……なんですか?」


「俺、逃げても良いかな?」


 俺は割と本気で女達と関係者を連れて逃げようかと考えてしまった。


「今、最大戦力であるニコラスさんが離脱すると……国が終わりますね」


「……家に帰ってメロンに顔を埋めて不貞寝してぇ~」


 もう本当に勘弁して欲しい。


 なんというか――ちょっと数の暴力という奴を甘く見ていた。


 唯、数が多いというだけが異常な程の脅威となって俺達に迫ってきていた。






 ジワジワと歩いてくる魔物との距離が数キロという段階になって、いよいよ兵士達の士気が怪しくなってきた。


 もういつ逃げ出す奴がいてもおかしくない状況で、もしも悲鳴を上げて逃げ出すような奴がいた場合、それに連動して逃げ出す兵士が続出して、戦いが始まってもいないのに戦線は一気に崩れるだろう。


「これは……出し惜しみしていられる状況じゃないな」


「何か切り札があるなら今の内に使っておいた方が良いと思いますよ。兵士が壊滅した後だと隠す意味すらなくなってしまうかもしれませんからね」


「……確かにな」


 隠しごとなんていうのは大衆や有象無象がいて初めて成り立つことであって、そういう一般人が皆殺しにされたら隠している意味などないのだ。


「気は進まないが……開戦の狼煙でも打ち上げるか」


 俺は深く、深く嘆息して……。


「コン、【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】の封印を解除だ」


《イエス、マスター!》


 俺の両腕の中に例の巨大な砲身が現れる。


「チャージを開始しろ」


《イエス、マスター! 魔石バッテリーを使用して【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】のチャージを開始します!》


 俺の【収納魔法アイテムボックス】の中の魔石から砲身へと魔力がドンドン流れ込んでいく。


《チャージ完了しました。トリガーをマスターに預けます》


「派手に行くぞ。【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】……発射だ!」


 そして無数の閃光が発射され――魔物の大軍団の一角で蹂躙を開始した。






魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】は数キロ先まで余裕で届き、着弾地点から半径1500メートル圏内で破壊の嵐を巻き起こした。


 勿論、その範囲にいた魔物は軒並み蹂躙されて空白地帯が出来上がったのだが……。


「凄いっ! これがニコラスさんの切り札ですか!」


「正直さぁ……」


 驚き興奮するクライサスに俺は至極冷静な声で返す


「俺にはこれがあるから【超過暴走スタンピード】が起こっても余裕とか思っていたんだが……焼け石に水だな」


 相当に密集していた為【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】が壊滅させた魔物の数は恐らく万に届くだろうが、それでも魔物の進行を一時的に遅らせる程度の効果しか得られなかった。


「でも、お陰で兵士の士気は確保出来たみたいですね」


「……それだけが救いか」


 俺の砲撃を見て眼下の兵士達が勝てるかもしれないという希望を抱いたのか、さっきまでとは段違いの士気の高さを見せている。


「あの攻撃、後何回くらい撃てそうですか?」


「……連発が難しいのは間違いない」


《冷却時間を含めて再チャージまで15分が必要です》


「次に撃てるようになるのは15分後だ」


「回数制限は?」


「最大で20発を想定していたが……どうかな? 短時間で何度も撃った経験がないから分からん」


 1度で倒せる数が1万だとすると、最大でも20万までしか倒せない計算になる。


 しかも、それは最大限に効果を発揮した場合の理想値でしかない。


「大事に使っていきましょう」


「……そうだな」


 こうして戦端は開かれ、【超過暴走スタンピード】vs人間の戦いの火ぶたは切られた。




 ◇◇◇




 戦端が開かれ3時間が経過した。


 俺は戦線を維持する為に4発目の【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】を撃ち込んだところなのだが……。


「なんだ?」


 撃ち終わったところで異変に気付く。


 砲口から煙が上がっているし、砲身全体に嫌な振動が走っている。


《オーバーヒートです。メンテナンスに6時間が必要です》


「マジかぁ~」


 元々【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】は連続使用を想定されていなかったのか、冷却時間を置いても過負荷が掛かり過ぎてしまったらしい。


「どうしました?」


 地上を兵士達に任せ、飛行出来る魔物を一手に引き受けて大活躍していたクライサスが俺の様子を見に来た。


「連続使用で故障した。直すのに6時間は掛かりそうだ」


「それはっ……! 困りましたね」


 クライサスとしても【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】があるからこそ戦線と士気を維持出来ていると分かっているのか難しい顔をしている。


「効果と範囲を考えれば【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】を使い続けるのがベストだったんだが……次を出すか」


「次?」


 困惑するクライサスを置き去りにして俺が【収納魔法アイテムボックス】から取り出したのは次の兵器――【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】とは違って流線形ではなく武骨なデザインの機械銃。


「そ、それは?」


「【魔力閃光回転銃マナ・レーザー・ガトリング】だ」


 これも兵器群の中では中の下くらいの威力を誇る。


「チャージを開始しろ」


《イエス、マスター。魔石バッテリーを使用してチャージを開始します》


 これは構造上【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】程の魔力をチャージ出来ないが、それは連続使用を前提とした兵器だからだ。


《チャージ完了しました。トリガーをマスターに預けます》


「……撃ちまくるっ!」


 そして俺がトリガーを引くと同時に、その名の如く砲身が高速で回転して――単発のレーザーを秒間100発近くも吐き出し始めた。


「す、凄い。ニコラスさんは、こんな物をいくつも持っているのか」


「俺が秘密にしたくなる気持ちが少しは分かったか!」


 俺は叫びながら【魔力閃光回転銃マナ・レーザー・ガトリング】を魔物の密集地に向けて連発する。


 殲滅力は高いが、攻撃がばらけ過ぎるので【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】程の効率が出せない。


 それを理解しながら俺は引き金を引き続けた。




 ◇◇◇




 更に3時間が経過して戦端が開かれて計6時間が経過した。


 既に【魔力閃光回転銃マナ・レーザー・ガトリング】もオーバーヒートしてしまい、俺は使える兵器群の中から【魔力焼夷炸裂砲マナ・アグニ・グレネード】を使用して着弾と同時に炎をまき散らす砲弾を次々と撃ち込んでいた。


《マスター、緊急事態です》


「またオーバーヒートか?」


《いいえ、マスター。もう直ぐ【収納魔法アイテムボックス】に確保してあった魔石バッテリーが尽きます》


「っ!」


 いつか来るとは思っていたが、実際に来ると思っていた以上にショックは大きかった。


 今、地上の兵士達が戦線と士気を維持出来ているのは間違いなく俺の兵器群に依存するところが大きい。


 この状況で兵器群が使用不可能になったら――余り考えたくないことが起こりそうだ。


「ハァハァ……また何か問題が起こりましたか?」


 既に大分疲労しているクライサスが駆けつけてくるが、その姿に思わず眉をハの字に曲げてしまった。


「お前、その怪我……」


「腕一本失うことに比べたら、まだまだ問題ありませんよ」


「……飲んどけ」


 想像以上の大怪我をしていたクライサスに俺は【収納魔法アイテムボックス】に確保してあったエリクシルを投げ渡す。


「はは。また白金貨400枚分の借りが出来てしまいますね」


 クライサスは躊躇なくそれを飲み干し、見る見る内に怪我が回復していく。


 怪我や体力は問題なくエリクシルで回復出来るが魔力や気力までは回復出来ないのでクライサスの顔色は悪いままだ。


「それで、何か問題でもありましたか?」


「既に問題だらけだが……兵器の燃料が尽きそうだ」


「そ、それはっ……! 大問題ですね」


 更にクライサスの顔色が悪くなった。


「ちなみに燃料は何なのですか? 可能であれば僕が集めてきますけど」


「【迷宮ダンジョン】の第50階層以降で取れる魔石だ。しかも、それを2ヵ月調整しないと燃料として使えん」


「……絶望的ですね」


迷宮ダンジョン】の第50階層以降というだけで、この国では不可能なのに、更に2ヵ月の調整が必要となったら調達は絶望的だ。


「残りの燃料で騙し騙し使いながら……あとは通常の手段で戦うしかないな」


「戦線は……崩壊しないように祈っておきます」


「……そうだな」


 俺とクライサスが目を背けている事実。


 戦端が開かれて既に6時間が経過しているが、倒した魔物の数は俺の兵器の攻撃を含めて15万~20万くらい。


 数だけ見れば相当な大戦果なのだが……。


(全く減っている気がしねぇ)


 地平線まで大地を埋め尽くす魔物の大軍団は健在で、【古代竜エンシェント・ドラゴン】は相変わらず魔物の後方で様子を見ている。


 それに対して地上の兵士達はギリギリで戦線を維持出来ているとはいえ、既に洒落にならない数の戦死者が出ている。


(こりゃ、本気で撤退のタイミングを間違えない方が良さそうだな)


 俺は負け戦以外を想定出来ない状況に深く嘆息した。




 ◇◇◇




 燃料が完全に尽きて3時間強。


 戦端が開かれて9時間以上が経過して俺は疲労で眩暈を感じていた。


魔戦輪リング・スラッシャー】だけでなく【収納魔法アイテムボックス】に入っている大岩を落とす【隕石落としメテオ】まで使って既に俺だけで数千の魔物を倒したが、やはり兵器群と比べるとペースダウンが否めない。


「うぷ。マナポーションの飲み過ぎで吐きそうです」


 クライサスも魔力切れを解消する為にマナポーションという魔力を回復する薬品を飲み始めてから相当調子が悪そうだ。


「今更吐いても誰も気にしねぇよ」


「いえ。吐いてしまうと身体が吸収する前なので魔力回復効果が発揮出来ないんです」


「……難儀だな」


「しかも魔力酔いが起きかけているので、この後はいくらマナポーションを飲んでも魔力を回復出来なくなります」


「バッドニュースばかりだな」


 兵器群の援護がなくなって直ぐに崩壊すると思っていた戦線だが、予想に反してギリギリで維持されていた。


 もっとも、それは逃げないのではなく、もう逃げる力が残っていないというだけの話なのだけど。


 走って逃げるよりも、その場で留まって武器を振り回す方が体力の消耗が少ないと判断してしまうくらい全体的に疲弊してしまっている。


 どう考えても勝てるビジョンが浮かばない。


「ニコラスさんっ!」


「ちぃっ!」


 おまけに駄目押しのつもりか、今まで魔物の後方で様子を見ているだけだった【古代竜エンシェント・ドラゴン】が動き出し、その口に膨大な暗い闇が集まっていく。


 それを察知して俺とクライサスは即座に飛行魔法で射線を離脱して……。




『グォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』




 戦場を凄まじい咆哮と共に洒落にならない【竜の吐息ドラゴン・ブレス】が横切っていった。


「マジで洒落にならんっ……!」


 間にいた魔物ごと兵士の中央をぶった切っていった【竜の吐息ドラゴン・ブレス】によって間違いなく数千人が一気に戦死した。


「ぶ、無事ですか? ニコラスさん」


「……なんとかな」


 上空に退避出来た俺とクライサスは無事だが、地上の兵士達は戦線が完全に崩壊して這うようにして逃げ始めていた。


「……どうする?」


「どうって……」


「こりゃ、もう無理だろ。俺らがいくら頑張っても勝ちの目はない。後は……どれだけ上手く負けるかだ」


「…………」


 俺の方は魔力を循環させて使用しているので魔力は消耗していないが、体力と気力は既にレッドゲージに突入しそうな体調だ。


 クライサスの方も似たようなもので、マナポーションで魔力を回復しきれていない現状で言えば俺より悪い。


 何より【古代竜エンシェント・ドラゴン】が様子見を辞めて前進を始めている。


「何か……何か手は残っていないのですか?」


「お前も知っての通り初手で切り札を切った。正真正銘の手詰まり……」




《マスター。兼ねてより製作の許可を頂いていた【獣神化ビーストモード】が完成しました》




「…………は?」


 自嘲気味にクライサスに宣言しようとしていた俺はコンの報告に呆気に取られた。


 いや。だって俺にはコンが何を言っているのかまるで理解出来ない。


 というか【獣神化ビーストモード】ってなんだ?




 ◇◆◇




 手詰まりの状況でニコラスに切り札はないと宣言されたクライサスは歯を食いしばり、血が出る程に手を握りしめていた。


 同時に自分の無力さを呪った。


 この戦場においてクライサスの戦果は常識的に考えればSランク冒険者としても目を見張る程であったが、それでもニコラスに比べれば霞む戦果だ。


 そのニコラスに勝てないと断言されて、それでも縋るようにニコラスに向けた期待は否定されて……。


「…………は?」


 完全に否定される前にニコラス本人がポカンと口を開けて呆気に取られていた。


「【獣神化ビーストモード】って……なんだ?」


 更に意味不明の言葉がニコラスから漏れる。


「いや、別に怒っているわけじゃ……そりゃ確かに許可したかもしれないが……」


 更にニコラスはクライサスしかいない状況でブツブツと誰かと会話を始める始末。


 それで、どうやら自分がニコラスに負担を掛け過ぎてしまったのだとクライサスは悟った。


「すみません、ニコラスさん。後は僕が何とかしますから、どうか生き延びてください」


 混乱と絶望で幻覚と話し始めたニコラスを気遣ったクライサスの目の前に……。


「やかましぃっ! そこまで言うなら……【獣神化ビーストモード】起動だ!」




《イエス、マスター!》




 その【彼女】は忽然と姿を現した。


(狐の……獣人?)


 身長は160センチ強の煌めくような金色の髪を腰まで伸ばし、同じく金色の瞳をランランと輝かせた狐耳と狐尻尾を持った驚く程に胸の大きな女性。


 ちなみにクライサスは知る由もなかったが、彼女がその身に纏うのは白い白衣と緋袴――つまり巫女装束だった。


《マスターのご要望通り、理想のメロンを再現しました!》


「おまっ……! それで完成まで時間が掛かっていたわけじゃないだろうなっ!」


《……誤差の範囲です》


「…………」


 2人の奇妙なやり取りに今度はクライサスが呆気に取られた。


「それで……この状況を何とか出来るってのは本当なんだろうな?」


《お任せください。【緋緋色金ヒヒイロカネ】を核に精霊魔法を組み合わせた特性の【精霊機関エレメンタル・チェンバー】の出力は事実上、無限の高濃度魔力を精製出来ます。今の私ならばマスターにも使用不可だった上位の兵器群が使えますので、敵の数が100万だろうと1000万だろうと問題にもなりません!》


「……どうでも良いが魔力処理領域は大丈夫なんだろうな?」


《計算では99%までならマスターの健康に支障はないと算出されています》


「うわぁ~。普通に不安になることを言われたぁ~」


「あのぉ~……?」


 全く状況を理解出来ないクライサスが声を掛けると、2人は思い出したように戦場へと視線を向ける。


「それじゃ任せて良いんだな?」


《勿論です》


 そうして女性――新たな肉体を得たコンは笑顔で宣言して、ニコラスの【収納魔法アイテムボックス】から【それ】を取り出した。


魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】よりも遥かに洗練された形状を持つ長大な砲身を持つ芸術的フォルムの武装。


《【精霊機関エレメンタル・チェンバー】……フルドライブ! 索敵範囲の敵をマルチロックオン!》


 クライサスには意味不明な単語を嬉々として羅列して……。




《【超級魔導光殺砲ハイパー・マグナ・ブラスター】……イグニッション!》




 そして戦場を一条の光が駆け抜けていき――同時に反応したように【古代竜エンシェント・ドラゴン】が再び暗い闇を集めて【竜の吐息ドラゴン・ブレス】を放ってきた。


 光と闇の光線が正面から激突して……。


「ちっ……生意気な」


 拮抗すら許されずにぶち抜かれた!


 一方の光線をぶち抜いたもう1つの光線は威力を落とすことなく高速で迫り――【古代竜エンシェント・ドラゴン】の頭を貫いて、そのまま身体ごと、この世から蒸発させて消滅させた。


「そぉ~れっ!」


 更に照射を続ける【超級魔導光殺砲ハイパー・マグナ・ブラスター】を左右に振って地平線の果てまで大地を埋め尽くす魔物の大軍団を抵抗の余地なく蒸発させていく。


 視界が晴れた時、クライサスの目に映ったのは超高温によって一面がガラス状になってしまった大地の末路だった。


 勿論、地平線まで大地を埋め尽くした魔物も、絶望的な脅威をまき散らしていた【古代竜エンシェント・ドラゴン】も蒸発して消えてしまっている。


 それは誰の目から見ても強力過ぎる兵器だった。


「……やり過ぎだろ」


 ポツリと呟いたニコラスに心の中で同意して、クライサスは現実を逃避する為に――その場で気絶してパタリと地面に倒れた。




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