第18話 『色々な準備を開始する』

 

 偶然出会ったクライサスに貴族の粛清リストを半分任せることが出来たので俺は大分楽が出来た。


 俺は元々貴族に対して敬意を払うような感情は持っていなかったし、クライサスにしても国外逃亡を企てるような馬鹿に遠慮するような性格はしていなかった。


 そういうわけで俺とクライサスは手分けして豚以下の屑共を血祭りにあげていった。


 え? 貴族を殺して問題にならないのかって?


 問題にならないというよりは、問題に出来ないというべきか。


 国外逃亡を計ろうとした時点で既に貴族とは言えないし、それ以前に俺とクライサスは誰にも知られることなく馬鹿どもを暗殺したので俺達がやったという証拠など残していない。


 こうして俺は国内の腐った貴族どもを一掃出来てスッキリしたし、貴族どもが国外に持ち逃げしようとしていた財産も没収するつもりだったのだが……。


「それは勘弁してください」


 この後、国内に残ったまともな貴族が軍隊を組織して辺境へと派遣する際に膨大な資金が必要になる。


 クライサスとしては、その資金に今回の貴族達が残した遺産を当てようと計画しているそうだ。


 俺としても既に金は使いきれないくらい持っているし、辺境に軍隊を派遣する為というのなら否はないので全ての資金を預けておくことにした。




 ◇◇◇




「ぐりぐりぐり……」


 貴族の粛清に数日を費やした俺は自宅でアイーシャの身体に額を擦り付けるようにして自分でも意味不明な行動をしていた。


「くす。今日のあなた様は甘えん坊ですね♪」


「…………」


 自分では気付かなかったが、どうやら俺はアイーシャに甘えたがっていたらしい。


 邪魔な貴族を一気に始末出来て色々と肩の荷が下りたということもあるが、それ以上に【超過暴走スタンピード】に対して無意識に不安を感じているのかもしれない。


 クライサスが色々と動き回ってくれたお陰で既に町には避難勧告が出されている。


 勿論アイーシャも避難の準備を始めてはいるが、実際に避難を開始するのは【超過暴走スタンピード】の発生が確認された後ということになった。


 アイーシャには、もう俺の家以外に帰る場所がないということもあるのだが、それ以上に俺がどうするのか待っている節がある。


「……なぁ、アイーシャ」


「なんですか?」


 その時、俺はアイーシャから身体を離して正面から向かい合い、唐突に自分でも分からない理由でアイーシャに【それ】を言おうと思い立っていた。


 後から理由を考えれば不安になっている俺を甘えさせてくれるアイーシャを是が非でも手放したくないと思ってしまったのだろう。




「俺の……子供を産んでくれ」




「っ!」


 アイーシャは目を大きく見開いて、反射的に両手で口元を抑えて……。


「えっと、その……それって……もしかして……?」


 アイーシャは期待を含んだ眼差しで俺の言葉の続きを待っていた。


 勿論、俺はアイーシャの期待を裏切るつもりは欠片もなかった。




「ああ。俺と……結婚してくれ」




「~~~っ!」


 俺の言葉――プロポーズと共にアイーシャの目が更に大きく見開かれて、その目からボロボロと涙が零れ出した。


 それが決して悲哀の涙ではないことは明らかで……。




「はい。はいっ! 喜んで!」




 それはアイーシャの返事を聞いても明らかだった。


 え? アイーシャを選んだのならセリーナとエルティーナとは別れるのかって?


 いや、それがこの世界の不思議な現象の1つなのだが、魔法の資質を調べる為に異常とも言える程に戸籍はキッチリと管理されているというのに、何故か結婚に関しての管理はガバガバなのだ。


 貴族なんかは自分が結婚したことを大々的に世間に知らしめるために盛大に祝って周囲に宣伝することがあるが、平民となると結婚式どころか結婚したことすら自分から宣伝しなければ知られることがない。


 おまけに結婚したからと言ってどこかに届けを出す必要もなく、両者の合意を持って結婚は成立する。


 つまり俺とアイーシャが結婚したとしても他の町にいるセリーナとエルティーナに知られる心配はなく、その気になればセリーナとエルティーナにも結婚を申し込むことが可能ってことだ。


「ああっ、あなた様ぁ♡」


 感極まって俺に抱き着いてくるアイーシャにそんな無粋なことを言うつもりは欠片もないけど。






 アイーシャと結婚して夫婦となり、それに連動してその夜は当然の如く初夜ということになった。


 今まで散々やりまくっておいて何を今更と思うかもしれないが、俺はその夜アイーシャに関して1つだけ勘違いしていたことを思い知らされた。


 俺が暫くの間、家を留守にした場合、寂しがったアイーシャが猛烈に俺を求めてきて朝まで搾り取られることが多々あった。


 だから今夜も初夜という名前とは裏腹に朝までコースだと思っていたのだが……。


「あぁっ! あなた様ぁっ♡」


 今夜のアイーシャは今までとは明らかに違っていた。


 なんというか――今までは激しく乱れていても何処か上品さを保っていたのに、今夜のアイーシャは下品と言われても否定しようがないくらいに俺を求め、喘ぎ、悶え、仰け反って快楽を貪っていた。


 アイーシャの内部も普段とは違っていて、よく言うまるで別の生き物のように蠢いて俺に絡みついてきて……。


「~~~っ♡」


「おぁぁっ……!」


 最後の瞬間、アイーシャの両足が俺の腰をガッチリとホールドして、まるでポンプの如く収縮して――文字通り俺を搾り取り始めた。


 今までは朝まで時間を掛けて、幾度も行為を行った末で搾り取られたという表現をしていたが、本当の意味で搾り取られるということを初めて実感させられた。


 なんと言っても、たった1度の行為で根こそぎ搾り尽くされてしまったのだから。


 結果として俺は文字通りに精も根も尽き果て、体力も気力も一気に持っていかれて――同じく疲れ果ててグッタリしているアイーシャの上に重なるように倒れこんだ。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


「ハァ……♡ ハァ………♡ ハァ……♡」


 そうして俺とアイーシャの呼吸の音だけが部屋に響いていた。


 正直、もう指1本動かせそうもないくらい疲労してしまったが、身体が重なり合ったお陰でアイーシャの顔は俺の直ぐ近くにあった。


「あ……なた様ぁ♡」


「ああ。愛しているよ、アイーシャ」


「~~~っ♡」


 だから可能な動作として愛の言葉を囁き最後の気力を振り絞ってキスをして――俺とアイーシャは同時にパタリと眠りに落ちて意識を手放した。






 翌朝、目を覚ました俺がアイーシャを探すと――彼女は同じベッドの上に座り込んだまま毛布で全身を隠して、おまけに口元まで毛布で隠して俺を見つめていた。


「……どうした?」


「そ、その……なんだか恥ずかしくなってしまって」


 言いつつアイーシャの顔が耳まで赤く染まっていく。


 昨夜の余りにも濃すぎる行為が原因かとも思ったのだが、詳しく事情を聞くとアイーシャは俺に裸を見られるのが恥ずかしいらしい。


 何を今更と思うかもしれないが、これは恐らくアイーシャの感情の変化によるものだろう。


 今までも俺はアイーシャに好かれていた自信はあるし、実際に共に過ごした時間と行為を重ねて【恋】という感情は向けられていたし行為中に幾度も好きと言って言われてきた。


 だが結婚したことでアイーシャの感情が変化して【恋】から【愛】に急速に変質した為に、身体が感情に付いて来られないという現象が起きているのだと思う。


 要するに俺が嫌いだから裸を見られるのが嫌というわけではなく、俺に対して急速に愛情を抱いてしまった為に裸を見られるのが恥ずかしくてたまらなくなってしまったのだ。


(なにこの可愛い生き物)


「きゃぁっ♡」


 思わず毛布ごとアイーシャを抱きしめ、それに対してアイーシャは一切拒絶してこなかった。


 アイーシャは急速に育った愛情に戸惑って羞恥を覚えているだけで、俺を拒絶しようとは思っていない。


 寧ろ、羞恥を覚える程に俺に見られたい、俺と触れ合いたいと思っている裏返しの感情だ。


「ちゅっ♡ んぅ~~~っ♡」


 抱きしめたままでキスをして、更にアイーシャ自慢のメロンに手を伸ばすと本人ですら制御出来ないくらい身体が敏感になっているらしく体を仰け反らせて快楽の喘ぎを漏らす。


 その後、毛布を剥ぎ取るのに時間が掛かったが、新婚夫婦らしく爛れた朝の時間を過ごすことになった。


「~~~っ♡」


「くぁっ……!」


 ちなみに昨夜と同じく1回の行為で全てを搾り取られたので昼間まで疲労困憊で動けなくなった。






 アイーシャと濃すぎる行為を連発したので、ひょっとするともう妊娠している可能性を考えたのだが……。


「薬を辞めたのが昨夜からですから流石にまだ無理ですわ」


 アイーシャは笑いながら否定した。


 そりゃ魔法的な避妊薬を使っていたのだから、効果が薄れるとしても数日から数週間は掛かるだろう。


「そんなに……赤ちゃんが欲しいですか?」


「欲しいね」


 好きな女を孕ませたいとは勿論思うが、それ以上に【超過暴走スタンピード】を跳ねのけようという確固たる理由が欲しかった。


 俺とアイーシャの子供がこの世界にいて、この国にいるのならば――こんな国でも守ってやろうという気になるだろう。


 今日明日でなくても良い。


 なんなら【超過暴走スタンピード】の後でも構わない。


 俺とアイーシャの子供ならば、俺が惜しみなく愛情を注げる存在になるだろう。


 そういう存在に、この世界にいて欲しかったのだ。




 ◇◇◇




 準備を開始する。


超過暴走スタンピード】が発生した際、それがどれ程に強大なものであっても余裕で対処出来るように。


「コン、遺跡で発見した兵器群の解析と研究成果はどうだ?」


《はい、マスター。以前使用した【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】のような中の下程度の兵器ならば問題なく運用出来ますが、それ以上の兵器となると今のマスターでは扱い切れないという事実が判明しました》


「……魔力不足か? 魔石で代用出来ないのか?」


《魔力不足ではなく、魔力の質に問題があります》


「質?」


《どうやら、この兵器群、上位の物になればなる程に純粋で高濃度の魔力エネルギーを使用しなくては稼働しない仕様のようです。マスターの魔力に問題があるというわけではなく、人間の魔力では作動しない兵器です》


「それは……困ったな」


 この国がどれだけの数の兵士を動員出来るかはわからないが、もしも【超過暴走スタンピード】で出現する魔物の数が100万以上となった場合、俺に躊躇している余裕がなくなるかもしれない。


 そうなった場合、俺が真っ先に使用するのは遺跡で発見した兵器群であり、俺はそれを切り札にと考えていた。


「仮に……【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】を使用すると仮定して、今ある魔石で何発くらい撃てると思う?」


《【魔力炸裂閃光砲マナ・バースト・ランチャー】の場合、現在【収納魔法アイテムボックス】に入っている魔石ならば20発前後撃てる計算になります》


「むぅ」


 あの洒落にならない威力の砲撃を20発前後。


 これを多いと捉えるべきか、少ないと捉えるべきか。


「ん~……」


 明らかな緊急事態なのだから、国が王都の結界装置に使用しているという魔石を出させるという案もある。


 それなら俺が態々【迷宮ダンジョン】に潜って魔石を探しに行かなくても良いのだが……。


《兵器群のチャージに使用するなら最低でも第50階層以降の魔石が必要になります》


「OH……」


 ダメダメだった。


 王都で最高階層に到着している探索者でさえも第46階層という有様なので、第50階層以降の魔石なんて俺にしか手に入れることが出来ない代物だ。


「今からでも【迷宮ダンジョン】に潜って魔石を集めるべきかな?」


《魔石を兵器群にチャージ出来るようにマスターの魔力を馴染ませる時間が足りません。魔石をマスターの魔力バッテリーにする作業には最低でも2ヵ月近い時間が掛かります》


「そっかぁ~」


 そういえば魔石を兵器群のエネルギーとして直接チャージしているのではなく、俺の魔力バッテリーとして間接的に魔石でチャージを可能にしているんだった。


 だから一旦俺の魔力に馴染ませて、俺の魔力バッテリーとして調整する必要があったのだ。


 こうなると、もう俺に出来る準備というのが思い当たらない。


《マスター。出来るなら個体名:イセリアが契約したという精霊の研究許可をお願いします》


「精霊?」


 珍しくコンにお願いされたことに困惑する。


 確かに前にセリーナに会いに行った時にイセリアに精霊と契約出来たという報告は受けていたが……。


「俺の【魔力視】では精霊を完全に認識することは出来ないぞ?」


 どうやら精霊に対してはエルフの血に眠る【精霊共鳴】の力が必須で、精霊を認識する為には【精霊視】というエルフ特有の能力が必要なようだった。


 残念ながら俺の【魔力視】ではボンヤリとした球体の形と色くらいしか分からなかった。


《構いません。精霊の研究許可を》


「むぅ。そこまで言うなら構わないが……」


《ありがとうございます、マスター》


 よく分からないがコンは精霊に興味津々みたいだった。


 コン自身の存在が精霊みたいなものだからだろうか?




 ◇◇◇




「ふぅ~む。確かに……何かいるな」


「まぁ」


 俺は今セリーナに会いに来て、セリーナに纏わり付いて守っているという精霊の存在を【魔力視】で確認していた。


 確かに青い球体が数体セリーナの傍を漂っているのは分かるのだが、これが精霊だと言われてもよく分からなかった。


 イセリアの【精霊視】ならハッキリと水の精霊が見えるらしいのだが、どうやら人間の俺には不可能な芸当らしい。


「最近のイセリアちゃんは凄いらしいですよ。学院の中でもトップクラスの成績で……」


 そういうイセリアの話を俺はセリーナから――事後のベッドの中で微睡ながら聞かされていた。


 アイーシャと結婚したことで少しは後ろめたさを覚えるのかと思っていたが、そういうことを考えるまでもなくセリーナの魅力に引き込まれていた。


 やはりメロンの魅力は逆らい難いものがある。


「御主人様? 聞いていますか?」


「……聞いてるよぉ」


「あぅっ♡」


 俺はセリーナのメロンに顔を埋めるようにして抱きしめる。


 やはりセリーナのメロンは最高だ。


「くす。仕方ないですねぇ♪」


 セリーナは俺を優しく抱きしめて、その後は子守歌でも歌うように話の続きを俺の耳元で囁き続けた。


 どう考えても睡眠誘発効果が抜群だったが、それでも折角のセリーナとの触れ合いの時間なので眠気を我慢して話は聞いていた。


 実際、翌朝に聞いた話の返答をしてみたらセリーナは驚いていたが、それでも嬉しそうに笑っていたので正解だったのだと思う。




 ◇◇◇




「今回の【超過暴走スタンピード】、ウチのギルドからも人手を出せと言われて困っているのよねぇ」


 俺がエルティーナを訪ねてきたら速攻で愚痴られた。


「そりゃ国が滅亡するかもしれないって規模の【超過暴走スタンピード】って話だし、こっちの事情を考慮している余裕がないっていうのは分かるけど……その間にドワーフ王国が攻めてきたらどうするつもりなのかしらねぇ」


「ふむ」


 これはどっちなのだろう?


 黙って愚痴を聞いていて欲しいのか、それとも溜まった鬱憤を晴らす協力をして欲しいのか――まぁ、両方だろうな。


「おいで」


「…………」


 俺がギルドの執務室に備え付けられたソファに座って手招きするとエルティーナは無言のまま――素直に俺の傍に寄ってきて隣に腰掛けて寄り添ってきた。


 更に腰に手を回して抱き寄せてガッチリとホールドする。


「だから私が言いたいのは……」


 そうやって俺に甘えながら愚痴を漏らすエルティーナ。


 出来れば直ぐ傍のメロンに手を伸ばしたいところだが、そういう性的な行為はエルティーナの家に帰ってからじっくりさせてもらおう。


 今は甘えながら愚痴を零すエルティーナを黙って抱きしめていれば良かった。






 長々とエルティーナの愚痴を聞いて、偶に相槌を返して、そうしている内に大分エルティーナも落ち着いてきたようだった。


「……ごめんね」


 そうして自分の行動が大人気ないとでも思ったのか、上目遣いに可愛く謝ってきた。


 なんという[あざとい]仕草だろうと思いつつも、俺はエルティーナを抱きしめて――そのメロンに手を伸ばす。


「は……ぁ♡」


 うん。毎回揉んでいるけど相変わらず素晴らしいメロンだ。


「あっ♡ んっ♡ んっ♡ んぅっ♡」


 暫くの間、ギルドマスターの執務室に淫らな水音と女の喘ぎ声で鳴り響き続けた。






 勿論、その後はエルティーナの家に向かってしっぽりと楽しんだ。


 そうして事後のピロートークで娘に友達が出来たという手紙が来たと嬉しそうに語った時には――少しだけ目を逸らした。


 うん。イセリアからアルティーナと友達になったという報告と、そのアルティーナに魔力訓練法を教えても良いか聞かれてたんだよね。


 アルティーナがエルティーナの娘ということは確定だったので秘密を遵守出来るようならと許可は出しておいたが……。


「~♪」


 機嫌良さそうに話すエルティーナには内緒だな。




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